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形而上的なたい焼き

「焼き立てじゃないんですけど…」

たい焼きの名店「恵比寿ひいらぎ」に足繁く通う者なら一度は耳にしたことのあるこのセリフ。
19時前後あたりから、ひいらぎは“たい焼き漁”を止める。そして、その日に獲れたものが尽きるまでの時間(もちろんその時間はそう長くは続かない)、店頭に立つ「たい焼き商」は、先述の言葉を最大限の申し訳なさと共に吐き出し続ける。

本日は、複数の外出、ミーティング、そして社内での作業のため、どうにかこうにかひいらぎに到達したのが19時半。時すでに遅し、件の「焼き立てじゃないんですけど…」と久々に対面した。

束の間の逡巡、後「いいですよ」。焼き立てではない今こそ、ひいらぎの真価が問われる。


ひいらぎすぐ横の「タコ公園」が決戦の場となる。街灯の下では、日中公園の主を気取っているタコもどこか心許ない。もう後幾日かでの開花を匂わせている空気に包まれ、たい焼きと私は対峙する。


一口、また一口、私は食べ進める。

頭から腹にかけては、焼き立てであった頃を思い起こさせる何かがあった。決して焼き立てのそれとは比べられないが、それは一匹のたい焼きとして人生…いや、“鯛生”が、包含しているあんこと同様、甘いだけのものでなかったことを雄弁に語るに十分なものだった。


尾びれまで到達したその時、ともすればノスタルジックに感じられたその焼き具合の様相が一変した。

そこには、焼き立てのそれを超えた焼き具合が待っていた。ひいらぎのたい焼きにおける特徴の一つである尾びれのカリッとした食感(私は密かに「カタルシス」と呼んでいる)が、焼き立て時から下がった温度と共に、一つの高みへとアウフヘーベンしていたのだ。

そして私は悟るのだった。たい焼き商の「焼き立てじゃないんですけど…」に続く言葉は、焼き立てではないことへの弁明ではなかった、ということを。それは、焼き立てではないことで、たい焼きはたい焼きという具体性から脱し、形而上的な何かとなってしまっているが、それに対面したあなたは、自身の存在の空虚さに耐え得るのか、という最後の忠告だったのだ…


私は、号砲を待つ短距離選手のような桜の蕾の下、一人立ち尽くすことしかできなかった。


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