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調香師にならなかった訳

最近、日本で「調香師」という肩書きを持って活動をする人が増えたように感じる。

そして、私もよく「あれ、調香師じゃなかったの?」と間違えられる。

ここで改めて述べておくが、私自身は調香師ではない。よって、香料に詳しくもないし、当然処方も書けない。

それでは私は何者か?と尋ねられると、とても困ってしまう。便宜上、「香水クリエーター」と名乗っているが、正直何でも良い。“Olfactive director”なんてのがもしかしたら正確なのかもしれないが、余計訳がわからなくなってしまう。

個人的には「フーテンの香水好き」くらいの方が好きだ。


気軽に調香師を名乗ることの是非はさておき、今日は私がなぜ調香師になるという選択をしなかったかについて書いていこうと思う。


5年ちょっと前に渡仏した際は、私は“普通の”香水マニアであり、調香師をぼんやりと志す留学生であった。

“普通の”というのは、日本の香水マニアがそうであるように、国内では各販売店の取扱ブランドを全て把握しており、新作が出てはいそいそと嗅ぎに行き、まだお目にかかったことのない海外ブランドをfragranticaを眺めつつため息をつき、旅行に行くと午前中は美術館、午後は香水屋巡りをする…という生態系を持ち合わせているといった意味だ。

そんな生態系を持った私が、パリに住んでしまった訳だ。時が許す限り香水屋に赴き、嬉々として香水を購入していた。


そんな中、違和感を覚える出来事があった。

それは、当時私が好きだった調香師が調香を担当した新作を試した際のこと。

「全く良くない…」

と感じてしまったのだ。全く。

いい調香師であるはずなのに、なぜこんな“駄作”を世に出してしまうのか…不思議でならなかった。

きっとその頃、様々な香りをかぐ中で、私の香りに対しての評価がシビアになっていたのだと思う。

この経験から、「いい調香師が必ずしもいい香水を作れるわけではない」という気づきを得たのだが、それが私自身が調香師を目指すことに疑問符をつけた。

そこから、私の「いい香水とは何か」という問いに答える旅が幕を開けることとなる…


「いい香水は少ない」という思いが芽生えたのはちょうどこの頃だと思う。それは今のクリエーターとしてのスタンスにつながっている。

もちろん、私が調香師を目指していたとして、本当になれたかどうかはわからない。わからないが、いい香水はいい調香師だけからでは作られないのであるならば、果たして時間とお金をかけて調香師を目指すことが“正しい”ことなのか、と考えるようになった。

そして、いい香水を作ろうと思ったら、ある種客観的な視点に立ってクリエーションに携わった方がいいのではないか、という思いが出てきた。


結果的に、その思いが、今の香水クリエーター、あるいはフーテンの香水好きとして、香りのクリエーションをすることにつながっている。


「調香師を目指さない」という選択をしたことが正しかったのかは今でもよくわからない。

それはさておき、今の私の使命の1つには、「調香師以外の形で香りのクリエーションをする道筋の提示」があると考えている。

香水業界で働きたいと考える人の多くが、とりあえず調香師を目指す中、「それはとても素敵なことだけれども、そうじゃないやり方もあるよ」ということを示したいと思う。

それを示せるかどうかは、これからのçanomaの成功にかかってくる。


さて、新しい道筋を示すために、しっかり頑張りましょうかね、フーテンの香水好きとして。


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