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遺すことについて

今日起こった出来事について書くにあたり、端折ったり順序を工夫することにより“面白い”内容になり得ることは重々承知の上で、ここではあえて、時系列にほぼ忠実に書こうと思う。そちらの方が、なんだか“正しい”気がするのだ。


私の中高時代における他校の友達のほとんどとは陸上競技を通して知り合った人だ。その中で今でも連絡を取り合っている人も数名いるのだが、1人だけ女性がいる。

彼女とは中高時代はそこまで親しかったわけではないが、お互い佐賀県のトップを争っていた選手だったので、合宿や遠征先で一緒になることも多かった。

彼女も私も大学で東京に来た。佐賀から東京に来る陸上関係の人がほとんどいなかったことも手伝い、彼女とより親しくなったのは逆に大学入学以降だった。そんなに頻繁に会っていたわけではないが、中高時代共に走った“戦友”という意識や、大学の部活でそれぞれ似たような難しい境遇に立たされたこともあり、話し始めると共感する部分が多かった。こざっぱりしてて誠実で、今でも大切な友達の1人だ。


彼女は体育大学を卒業後、一旦大手企業に就職したが、その後フィットネスインストラクターとして独立した。今は山形で活動しているので、興味のある方はぜひ見てみていただきたい。


あれは3年ほど前のこと。私は自分の香水ブランドを立ち上げる決意をし、急遽調香師Jean-Michel Duriezに試作を依頼、今日ではçanomaの「1-24 鈴虫」と「3-17 早蕨」になっている香りの初期の試作品(「1-2」と「3-1」という試作品番号だったように記憶している)を携えて、日本に一時帰国をしていたタイミングだった。

フランスに戻る直前に、上の彼女(ここから先はわかりやすいように「瀬戸」と書く)から「渋谷でフィットネスのレッスンを少人数でするんだけど、来ない?」という連絡があった。その当時既に瀬戸は山形に住んでいたため、会える機会もなかなかない。せっかく声をかけていただいたので、タイトなスケジュールをどうにかやりくりして無理矢理参加することにした。

そこに瀬戸の友達として参加していたのが、「もんちゃん」だった。親しみを込めて、このように呼ばせてもらう。

女性の中では背が高い方(だったように私は記憶している)で、その上金髪で独特の雰囲気だったもんちゃんだが、一度話し出すとそのひょうきんさが愛らしい人だった。

6人ほどで仲良くレッスンを受け、その後みんなで飲みに行った。とても楽しい時間だった。


もんちゃんはグラフィックデザイナーでありアーティストだった。レッスン以降、もんちゃんに会うことはなかったが、Instagramを通して、個展を開催したり、JAGDAの新人賞を受賞したり、と大活躍であることを知った。


瀬戸から連絡が入ったのは、今からちょうど一年ほど前。


もんちゃんが、亡くなった、と。急病だったらしい。


会ったのは一度だけだったが、ショックだった。


ここまでが過去の話。ここからは今日起こったことを書く。


夕方に代官山で予定があった。約束をしていた相手が遅れてくるということで、代官山蔦屋書店で時間を潰すことに。レザーシューズに関する雑誌をパラパラとめくってなんとなく過ごした。

その後、20時ごろに予定が終了。蔦屋書店のスターバックスで夜ご飯でも食べて帰ろうと思い、1人再び蔦屋書店に向かう。

コーヒーとサンドイッチでお腹を満たし、閉店に近づく蔦屋書店の中を散歩していた。

と、これが目に留まった。

もんちゃんがイラストを描いた絵本のポップアップだ。

絵本を手に取って読んでいると、販売員の方3人ほどでいそいそと商品を撤収作業をし出した。

その中にいた女性の販売員の方が、「今日までのポップアップなんです。西川さん、ご存知でしたか?」と私に声をかけてきたので、「一度だけ会ったことがありまして」と返した。

実はこの販売員の方、もんちゃんの蔦屋書店における窓口だったのだ。

「良いZINEができたんです、って西川さんから連絡があって、モノは届いたものの、彼女が説明にいらっしゃる前に、急に体調が悪いって言い出して、その日のうちに亡くなられて…」

私達2人は、何かを抑えるように、言葉を選びながら、切りながら話した。抑えていたものは、涙だったかもしれないし、感情だったかもしれない。


結局、もんちゃんの絵本「いま めが あったよね?」、先述のZINE、彼女がデザインしたタオル、そして彼女が表紙のデザインを手がけた「チェコ・デザイン100年の旅」という展覧会の図録を購入。


そのことを、瀬戸に報告し、2人でもんちゃんのことを懐かしく思い出した。

ふと、私がもんちゃんに出会った、あの瀬戸のレッスンの写真があるのでは、と思い、過去の写真を振り返ってみた。

そこで気がついた、あのレッスンは、2019年3月16日に行われていたのだ。日付が変わって今日2022年3月16日の、ちょうど3年前。


もんちゃんがこの世を去って一年弱、彼女はもしかしたら、私達に自分のことを思い出して欲しかったのかもしれない。だからこれは、もんちゃんのちょっとした“いたずら”だったのではなかろうか。

もしそうだったら、とっても嬉しい。


さて、もんちゃんは素敵な作品を遺してこの世を後にした。

八戸ブックセンターでは、現在作品の展示が行われている。

彼女のように、死後も自分の作品が残り、多くの方に鑑賞され続けることは、はたして幸せなのだろうか。

幸せなような気もする一方、それは死後も作品が批判に晒され続けることをも意味する。

安らかに眠れるのだろうか…私だったら、天国から“エゴサーチ”をしてしまいかねない。


あくまでも可能性の話だが、このnoteをアップロードした5分後に心臓発作で倒れるかもしれない。そうしたら、çanomaの4本の香水は、私の遺作となる。これがなかったら、私は何も遺さずに、「立つ鳥跡を濁さず」で平和にあの世に旅立っていたわけだ。


ただ、今日の出来事で、この世になんらか遺しているものがあると、思い出してほしい時に、ちょっとした“いたずら”で思い出してもらえるのかもしれない、とも思った。

そう考えると、遺すことも悪くないな、と感じた。


もんちゃんもきっと天国で今、そう思っているはず。


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