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【複雑機構】パワーリザーブ・インジゲーターの仕組みや特徴について

こんばんは。yutaです。
今日は、複雑機構と呼ばれる機能についての説明です。

単語の意味からなんとなくどんなものか
理解された方もいらっしゃるかもしれません。

そうではない方も、ぜひ気軽にご覧いただけたらと思います。

0.パワーリザーブ・インジゲーターとは?

7大複雑機構と呼ばれる複雑機構※の一つとなります。
そして7大複雑機構とは、下記にあげるもののこととなります。

・ミニッツリピーター
・トゥールビヨン
・パーペチュアルカレンダー
・スプリットセコンド・クロノグラフ
・パワーリザーブ・インジゲーター
・レトログラード
・ムーンフェイズ

※時計を作るための技術の中でも、複雑で
  高度な技術が必要とされる機構

また、下記3つの複雑機構は3大複雑機構と言われており、
上位に位置されています。

・ミニッツリピーター
・トゥールビヨン
・パーペチュアルカレンダー

では、続いて本編に入っていきます。

1.パワーリザーブ・インジゲーター詳細

機能の説明に入る前に、まずはパワーリザーブについての
説明です。

1.1.そもそもパワーリザーブとは?

機械式時計※でゼンマイを完全に巻き上げた状態から、
ゼンマイが解けきって止まるまでの駆動時間の事を
意味しています。

※手巻き、自動巻き共に

ちなみに英語での「パワーリザーブ」とは、パワーが動力、
リザーブが蓄積、保存などを意味しています。

時計の説明などに「パワーリザーブ約48時間」と
記載されていますが、これは、ゼンマイを完全に巻き上げた状態で
約48時間は動き続けることを指しています。

1.2.パワーリザーブインジケーターとは?

械式腕時計では確認する事が難しかった時計の残りの動力を
目に見える形で確認する事ができる機能のことです。
これによって巻き上げ時のゼンマイ切れを回避できるといった
メリットがあります。

車で例えると、ガソリンメーターのような役割を果たします。
車については、ガソリンスタンドなどで補給を行わないと
燃料が空になってしまい、動かなくなり
場合によっては生活に支障をきたす方もいるかと思います。

ただし、時計の場合は、パワーリザーブがなくなっても
好きな時に巻けば良いので、補助的な機能とも言えます。

そして英語での「インジケーター」の意味は、
対象の状態を標示する装置などを意味しています。

「パワーリザーブインジケーター」とは
英語が詳しい方については、言葉の意味でなんとなく
わかった方もいらっしゃるかもしれません。

1.3.パワーリザーブインジケーターの仕組み

パワーリザーブ表示機構の駆動輪列は、ゼンマイを収める
香箱(ゼンマイを収める部品)に噛み合っています。

ゼンマイを巻き上げる際は、ゼンマイを取り付けた
香箱真(香箱の中心)がパワーリザーブ用の
輪列を動かして、パワーリザーブ表示を進めていきます。

ほどける際は、香箱上に固定された歯車に噛み合った歯車が、
パワーリザーブ表示を戻していきます。

つまり、パワーリザーブの駆動輪列には、表示を進めるためと、
戻すための2系統が必要となります。そのために部品点数は増え、
時計は壊れやすくなると言われています。

また、香箱※に直接噛み合っているので、パワーリザーブ表示機構の
不具合が時計の止まりの原因となることもあります。

■香箱について
主ゼンマイを収める筒状の部品のこと。
香箱、香箱蓋、香箱真の3部品で構成される。

【参考】香箱の仕組み

と、文章で書いてみてもわかりにくい部分が多いかと
思います。下記の動画がyoutube上にありましたので紹介します。

なお、仕組みは各社異なると思いますので
「こう言った感じに動くのか」という参考程度に
ご覧いただけたらと思います。

1.4.パワーリザーブインジケーターの歴史

パワーリザーブインジケーターを初めて搭載した
時計を製作したのは、こちらもブレゲ。

アブラアム=ルイ・ブレゲ(1747-1823)

※トゥールビヨンなどの他の複雑機構も発明している人物です。

具体的には、18世紀末にアブラアン-ルイ・ブレゲが
ジュルニャック・サン・メアール伯爵の為に製作した
懐中時計「ブレゲNo5」。

11時の位置に取り付けられた扇形の目盛を
移動する針により、主ゼンマイのパワーリザーブ量が
確認できる仕組みになっていました。

そして、腕時計の時代になり1950年代などの
アンティークウォッチにもパワーリザーブ搭載モデルは
散見できるものの、パワーリザーブ・インジケーターの
搭載例が目立って増えてきたのは、機械式時計が
本格的に復活する1990年以降と言われています。

■アンティーク時計 パワーリザーブ搭載モデル

そして、パテックフィリップがパワーリザーブ表示の先駆者と
呼ばれている記事があります。

そう考えると、なぜパテック フィリップがパワーリザーブ表示の先駆者になれたのかは容易に想像できる。後にパテック フィリップは、ほぼ歯車だけで構成される年次カレンダーを作った。そんな彼らにとって、同じく複数の歯車を使うパワーリザーブ表示機構を設計することは、決して難しくなかったはずだ。

 その後、パテック フィリップは、視認性と省スペースを両立させるべく、さまざまなパワーリザーブ表示機構に挑戦した。以降のパワーリザーブ表示機構で、パテック フィリップの影響を受けていないものは、おそらく皆無だろう。

出典:パワーリザーブ表示機構原理や有用性、メリットとデメリットを解き明かす

※年次カレンダー
  年に一度(2月末→3月)のみ日付調整が必要な日付表示。

上記から、パテックフィリップが腕時計でのパワーリザーブ表示の
流れを作ったものと考えています。

1.5.パワーリザーブインジケーターの種類

続いては、腕時計に搭載されているパワーリザーブインジケーターの
種類について説明します。

1.扇型
文字盤にパワーリザーブを表示させるタイプで
一般的なものがこちらのタイプとなります。
ただし、表示については各社異なります。
具体的には、

残り時間数を表示するもの、

画像引用:Breguet

プラスマイナスで表示されるもの、

画像引用:Patek Philippe

文字は無く色で表示など

画像引用:Grand Seiko

など扇型といっても、様々な種類があります。

2.丸型
文字盤にスモールセコンド※のように配置されているタイプ。

画像引用:IWC

※文字盤から離れて配置されている秒針。

3.リニア式表示
水平に移動する指針によってパワーリザーブ残量を表示するタイプ。

画像引用:PANERAI

4.ディスク式表示
小窓からのぞくディスクの色でパワーリザーブ残量を表示するタイプ。

画像引用:NOMOS Glashütte

とパワーリザーブインジケーターと一言でいっても、
各社様々な表示のデザインを作成しています。

1.6.パワーリザーブ搭載モデル

ちなみにパワーリザーブインジケーターを搭載したモデルで
長時間動くモデルについて一部紹介します。

1.10日間

2.31日間

3.50日間

上記で紹介したモデルの内、後ろの2つが
高価格かつ限定モデルとなります。

また、パワーリザーブインジケーターを搭載せずに長時間動くモデルで
比較的手を出しやすいモデルも一例ですが紹介しておきます。
参考までに。

■3〜4日間(80時間)
・ティソ パワーマティック80ムーブメント

・ハミルトン カーキ フィールド マーフ オート

・ミドー マルチフォート クロノメーター 1

■5日間
・ボーム&メルシエ クリフトン ボーマティック

2.最後に

いかがでしたでしょうか。
以前から知ってらっしゃった方もいらっしゃるかも
しれませんが、さらに知ることができたり、
もしくは、別の視点を持てた方もいらっしゃるかもしれません。

腕時計を購入する際の参考の1つとして、
捉えていただけたらと思います。

今日もご覧いただきありがとうございました。


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