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奇妙な文化と轟け音楽

奇妙礼太郎の音楽に抱かれながら
やけくそみたいに冷えた電車に揺られる。

新宿の室外機が吐いた溜息はなんだか毒のように思えて、
気付けば息を止めて早歩きをしていた。
そう云えば日記で僕はいつも早歩きしている気がする。

速度を保ったまま新宿駅に到着してからは
乱れた心拍を深呼吸で整えたかったけれど、
人で溢れかえる新宿ではそんなタイミングが訪れることはなかった。
正確には深呼吸したくなくなったと言うべきだろう。
だって他人の悪い気まで吸い込んでしまいそうじゃないか。

ほどなくして重たそうな車両が迎えに来て、
楽しくない椅子取りゲームがはじまった。
あれこそ人間の本性が表れる瞬間だと思っている。
僕はというと「あくまで私は参戦しませんよ」という風に最低限の感情を削ぎ落とした顔をして、波風の立たない位置取りをして風景に染まる。
それでいて空いていたら「それならば」といった風情で日本人らしくさささっと座るのだ。
洗練された無駄のない動き。
東京に来てかれこれ6年ほどが経ったが、
この立ち回り方ばかりは未だに分かっていない。

人がまばらになって僕が席に座れた頃には「恋愛重症」が流れていたと思う。


みんな奇妙礼太郎を聴いていたらいいのに、
そんなことを思いながら


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