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いつもの保育園の掃除機がけPart1


 3月をすぎた保育園は、いつもより大忙しな感じでした。先生たちは卒園と入園の準備で大忙しなのにも関わらず、僕たちにも春の遠足など行事ごとがあったからです。

 
 今回はそんないつもの保育園での掃除機がけエピソードになります。


 3月にもなると、僕たち年少組でも掃除のお手伝いをするようになってきていた。とはいっても大したことはできずに床を雑巾で磨く程度だが、それでも僕たちは先生のために一生懸命になって行っていた。

  ただ、僕たちがそんなことをやったとしても先生の仕事は大変そうで、せわしなく動き回る先生たちの姿を今でも覚えている。

「先生、なにか手伝えることない?」

 同級生のはなは、床の拭き掃除がある程度終わると、ほかにも手伝えることがないか先生に尋ねていた。しかし、それを聞いた男の先生は、

「ありがとう。でもはなちゃんは十分お手伝いしてくれたから、もう後はお母さんがお迎えに来るまでお友達と遊んでて。ね。」

 と言って固まって遊んでいる僕らのほうへはなちゃんを引き渡すと、保育室の掃除機掛けを行うために教室かどの掃除機を取りに行った。
 いつもここで僕は掃除機を持つ先生に駆け寄って、大好きなさえ先生に掃除機をかけてもらえるように頼み込むのだが、今日はさえ先生が見当たらない。仕方なく、僕は男の先生の掃除機掛けの音を聞く羽目になった。

 いつものさえ先生が扱う掃除機であれば瞬く間に心がゾワゾワしてくるが、今日はそんなことが起きるはずもなく、おとなしく先生の絵本の読み聞かせを聞いていた。すると、読んでいてくれた先生がそんな様子の僕を疑問に思ったのか、不思議そうな顔をするとこう言った。

「ゆうくん、今日はおりこうさんだね。」
 
 そう言ってニコッと笑った先生は、僕が本当に見たいものはわかっていないのだろう。僕が見たいのは掃除機掛けでなく、さえ先生の掃除機掛けなのだ。と、そばを歩いていたベテランの先生が、

「だって、ゆうくんはさえ先生が好きなんだもんね。」

 と僕と先生に話しかけた。僕は少し顔を赤くしながらうなずく。
 
 「だから、□□先生じゃダメなのよね(笑)」

 ベテランの先生は、そういうと僕に向かって笑みを浮かべながら、駆け足でその場を後にした。僕はそれに少し恥ずかしくなりながらも、なんとなく掃除機を目で追ってしまっていた。だが、いつも心をときめかせてくれるあの光景はそこにはない。さらに、さえ先生ではないため、掃除機がけも保育室だけですぐに終わりを迎えてしまう。こうしてそのままこの日の掃除機がけは終わった。

 
 しかし、この日の清掃はこれで終わりではなかった。

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