マガジンのカバー画像

我儘の彼岸:柚木呂高短編集

17
出されたお題の数々に思考を遊ばせ、物語ごとに文体を変える。 現実と空想のあわいを泳ぐスペキュレイティブ・フィクション的世界観。 人魚の生首と過ごす『人魚の友人』、脱げた黒猫の靴下…
運営しているクリエイター

#生首

人魚の友人

人魚の友人

 花布芙蓉は仕事の帰りに友人の璋子と飲みに行った。酔郷譚に倣って珠でも瑤でもなく、ましては霊でもない、待賢門院の璋子と書く。コロコロと鳴るように笑う女で、高校時代から大学まで一緒だった親友である。会社は残念ながら別々になってしまったが、似たような業界だからか、互いに生活のリズムは似ており、こうやって共だって酒を遊びに行くのは珍しいことではなかった。

 二人は酒に強いわけではなかったが好きであった

もっとみる