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「感情がわからない」と言われたことがある全ての人へ

「感情がわからない」と言われたことはないでしょうか?
まるで、演出席から灰皿がとんできそうな台詞なのですが、現実でもよく聞いたりします。

僕は、俳優の活動をしていたので、演出席から「いまの台詞の感情がわからない」と、よく言われていました。それが、文章であろうと、フリートークであろうと、あらゆる表現をする場所で、同じようなことを言われてきました。

表現の世界にとどまらず、生活をしている中でも、この言葉を聞いたりするのです。付き合ってるパートナーと話をしているときだったり、共同生活を送っている家族だったり、会社の上司からだったり、もうそれはたくさんの人から言われてきました。

そして、自分のライフワークとして、舞台演出の活動をしはじめたときに、「感情がわからない」と、僕も同じことを俳優に思っていたのです。

その俳優に「いまって、どういう気持ちですか?」と聞いてみると、「とくに、何も思ってないです」と言うのです。

僕は、「そんなはずはない」と思い、いろいろなアプローチ方法と様々な言葉で、「きっと、こういう感情なんじゃないかな」という可能性を、自分事として受け止めてもらえるように、丁寧に解きほぐしていきました。結果、豊かな表現につながることができ、安心した覚えがあります。

そもそも、「感情」とはどうやって生まれてくるのでしょうか。私が伝えてきたことをまとめてみました。


感情が生まれる出発点は期待すること

テレビドラマや映画にでてくる登場人物には、必ず目的があります。
「海賊王になる」や「鬼になった妹を助けたい」など、こうなりたい未来に期待をして物語をすすめていきます。

この目的がない登場人物は存在しません。
もし、特筆した目的がない登場人物がいた場合でも必ず目的があります。それは、「生きのびる」ことです。

「生きのびる」とは、「理想の生活をおくりたい」ということ。そのために、周りやこれからの将来に期待をして生活をしていくことです。

「理想の生活をおくりたい」とは、どういうことでしょうか?
「海の見える場所に住みたい」「毎日美味しいものを食べたい」などいろいろあると思いますが、もっともっと削ぎ落としていくと「ここにいる自分を認めてほしい」になります。

そして、その目的のための行動は何になるでしょうか?
赤ちゃんの場合、お腹がへったり孤独を感じると、泣きます。周りにいる大人たちは急いで赤ちゃんの不快を解消するために動いてくれます。感情をつかって伝えているわけです。

では、泣くことが難しい、大人はどうしたらいいでしょうか?

大人は、「ここにいる自分を認めてほしい」と思ったら、話かけます。

つまり、表層化していない最小単位の目的は「話したい」し「聞いてほしい」になります。

この「話したい」という気持ちをもって行動をおこしたとしましょう。

もし、話したいと思っていた相手が、話をきいてくれたり、共感をしてくれたら、嬉しいし楽しいと思います。

しかし、もし話したいと思っていた相手が、無視をしたり、想定外な言葉が返ってきた場合、怒ったり悲しくなると思います。

この、期待を応えてくれたり、裏切られたりすることで、感情というものが生まれます。

つまり、「期待をすること」から、すべてがはじまります。

「あなたのやりたい事が、私のやりたい事」は危険?

少しだけ私の話をしますが、パートナーと一緒に生活をしているとき、ケンカをしたことがありませんでした。

「ここに洗濯物を置かないで」「キッチン後片付けをちゃんとして」など、一度言われたこと、すべて受け入れていました。

「じゃあ、次からはそうするね」と僕は言い、二度とそのようなことがないように、工夫をしていました。僕は、こういうふうに過ごしたいという理想がなかったので、パートナーのいうことを、すべて受け入れていきました。

そのようにして、共同生活のルールをつくっていきました。

僕は、うまく生活できていると思っていたのですが、ある日、こんなことを言われます。

「一度でいいからケンカがしたい・・・」

これまで、僕たちはケンカをしたことがありませんでした。しかしそれは、僕がパートナーファーストで過ごしていたので、すべてのことを無理なく受け入れていました。

「パートナーがやりたいことが、僕のやりたいこと」
パートナーのことをものすごく信頼していた結果、そんな美辞麗句を連ねながら生活をしてきたのですが、僕はパートナーとの生活に、なにひとつ期待していなかったことが、そのときわかりました。自分でも気づいていませんでした。

当時の僕は、パートナーの言動に、怒ることも、喜ぶことも、悲しくこともなく、何を考えているのかわからなかったそうです。もし、「感情がわからない」「何を考えているのかわからない」と言われがちな人は、小さくてもいいので、未来へ期待することからはじめてみてください。

自分が悪いと思うと、未来に期待できない

「期待することからはじめてください。」と言っても、そんなことできませんよ。と言われることがあります。もしかしたら、どこかで自分を責めた経験があるのではないかと思います。

先ほどの、赤ちゃんはお腹が減ったり孤独を感じると、泣きます。しかし、泣いても誰も見つけてくれない場合、赤ちゃんは見つけてほしいと思い、さらに泣き出します。それでも人に見つけてもらえない場合、赤ちゃんは泣くのをやめてしまうそうです。

つまり、自ら諦めてしまうのです。

「お腹がすいている自分がダメなのかもしれない」「泣いている自分がダメなのかもしれない」
泣いても未来は何も変わらない。そうしてまだ見ぬ未来に期待せず、悲観しはじめたとき、今がダメになっていきます。

これを読んでいるのは、きっと大人の人だと思います。
どうか、自分を褒めてください。自分のいいところを見つめてください。そして、問題の所在を確認して、未来に大いに期待してください。

さいごに

感情はどこから生まれるのかについて書いてみました。

僕は、演出という名の助産師として、多くの人の感情や表現の誕生に携わってきました。感情が伝わるか、伝わらないのかは、「技術」によるところが大きいと思います。つまり、伝えようと思ったら、練習が必要なのです。

嬉しいときは、笑う。怒るときは、顔をしかめてみる。悲しいときは、泣き、楽しいときは、両手をあげる。そういった気持ちになったときに、行動に起こせるのか練習が必要なのです。

自分では笑っているつもりでも、相手に伝わらないことがあります。AIでも、人間の顔を見て、どういう感情か判断するのは、相当に難しいそうです。

自分の状態を、相手が誤解なく受け取ってくれるのは、とても素敵なことです。感情がわかりやすい人は、親切な人だと思います。

まずは、「話したい」「聞いてほしい」からはじめてみてください。

聞いてほしい内容でした。
最後まで、この話を聞いていただき、ありがとうございました。

おしまい。


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