シザーハンズと、透明なヨロイ
「抱きしめて」
「…出来ない」
『シザーハンズ』を見た。
大学生のときだ。
当時付き合っていた彼女がDVDを買ってきて一緒にみたのを覚えている。
手がハサミだから、抱きしめることができない主人公、エドワード。
僕は、エドワードに対して、こう思った。
**「自分でハサミを折れば、抱きしめられるのではないか?」
**
言葉の企画 2回目の講座。
前から二列目の通路側に座った。
スライドが表示される。
前回のおさらい。
予算はないけど、自由度は高い。
この領域は、自分を出せる仕事。
自分を出すとは、一体どういうことなんだろう?
話を聞きながら、最近、別の人に言われた言葉を思い出していた。
「君は、無意識のうちに、他人が望んでいる言葉を言ってしまうから気をつけなさい。それを続けると、自分の考えがわからなくなってしまうよ」
いつのまにか、他人のやりたいことが、自分のやりたいことにすり替わっていることがある。自分の本当にやりたいことは、後ろにおいて、目の前の人がやりたいことを叶えたいと思ってしまうことが、僕にはある。
スライドが表示される。
あなたは本気ですか?
相手は喜びますか?
本当にできますか?
や、本気だよ!
相手がそれを望んでいるんだから、喜ぶことだし、できるかわからないけど、してあげたいことだよ。
コメントを書きました。
それは、本当にやりたいことですか?
…言葉につまる。
…いままで、僕は、相手が望む言葉を言っていた気がしてくる。
相手が望む言葉。
相手が望む声。
相手が望む企画。
言葉を選ぶ。相手が望んでいる相手になろとする。いつしかそれが、社会性という透明なヨロイとなって自分を守るように、身につけてしまっている。
僕は、自分に対して、言葉狩りをしていたことに気づく。
自分の中で生まれた言葉を押し殺して、語られない言葉ばかりを増やして、憂えている。
エド…、ハサミを折るとか、折らないとか、そういう問題じゃなかったんだね。
今なら、わかる気がするよ。
言葉の企画2回目から 三日後…。
講座のメモを見ながら、このnoteを書く。
ふと、阿部さんの企画書を見ているうちに、泣いてしまいそうな瞬間があったことを思い出す。
魅力がない人なんていない。
一生懸命のあるところには、何かがある。
それを言葉にして、背中を押したい。
一生懸命生きてきた人へ。ほんの少し。そして強く肯定する言葉。
透明なヨロイをまとっていても、響いてしまう言葉。
僕は、涙ぐむ。
…そうでありたいと。
部屋の片隅にあるダンボール。
その中には、片付けられていない、本やDVD。
探してみよう。『シザーハンズ』
そして次の瞬間、僕は、ダンボールの中身に手を伸ばすんだ。
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