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【326】一瞬の頷き

仕方ないと言い聞かせる。諦めるしかないよってしかめっ面しながら「そうだそうだ」と呟く。

世の中には自分の力や考えでは遠く及ばないことがある。

いや、そんなことばかりだろう。だからと言っていちいち気落ちはしていない。一定のところまでは理解が付いて行っているからだと思う。


誰かの話を聞いていても低レベルな僕の頭脳はたまに「ちょっと待って」と声にならない言葉で脳内再生を繰り返す。たまにそうしないと付いていけなくなることがある。付いていけなくて話の途中からは記憶にあまり残っていないときもある。

分かり易い話や聞き取りやすいペースであったとき、たまにシュッと心と脳の両方に吸収されることがある。

あのときの先輩の話なんて今思えばもしかしたら《ブラックジョーク》とも思えなくはないのだけど。

やけに熱弁ふるっていたその内容に妙に納得してしまったんだ。


これは地球の摂理においてどうしようもないことなんだ

どこかで聞いた話なのか、本人が思っていることなのかすっかりその仮説に聞き入ってしまっていた。

2020年3月、緊急事態宣言時発動より少し前の地元の居酒屋での一幕。

かつての職場の先輩と居合わせて呑みだした時のこと。話題はどうしたって新型のウイルスについてだった。まだ先のことはそこまで心配していなかったけど、少し危険なムードは世の中に蔓延し始めていた。

どうなっていくのか。それがそんなものなのか見えない中でどうしたって不安にならざるを得なかった。少しづつ死亡者数が世界規模で増えて来ていたから当然のことで、居酒屋で呑むなんてのもこの先は考えないとなぁって話もしていた。


死んじゃうのは仕方ないんだよ

そうやって話は続いた。

地球の人口が増え過ぎたことで環境汚染が急速に進んだことに地球は怒っていて、得体の知れないウイルスをその根源になっている中国から発生させたんだって。

確かに中国は今や人口が世界でも1番多くなっている。環境汚染も大きな話題になっているのも確かだ。

地球に負荷が掛かっているところを浄化させているんだよと言う。

そうすると環境汚染は減って行くし、止まる。

そう言えばテロリストもここのところはあまりニュースでも聞かなくなった。戦争も新たには始まってはいない。人的な争いは止まったから、その点では平和に感じられなくもない。国と国の往来もほとんど出来ないから、それぞれの国が自国の問題に向き合ってはいる。


「ああ~それはわからなくもないですね」

そんな相槌をしながら納得していた部分は結構あった。

確かに視点を変えていくと、そんなこともあり得なくないのかなって思った。そんな摂理の中で無情に人の命は支配されているんだろうかと。

やけにその話が合点があったせいか、すっかりウイルスによって死ぬことが仕方ないんだと感じた。帰り道の電車に揺られ、車窓から見える景色も簡単にいつかなくなってまうんだろうかと考えた。


でも、死ぬことがそんな理由で仕方ないと納得できるだろうか。


かつての震災のときに見た津波に飲まれていなくなる人たちに対して仕方ないと言える人がいただろうか。

どんな地球規模の摂理を問われようと人の死は到底納得できるものじゃないようにも感じた。


あれからさらに時は流れ、有名人が亡くなることもあったせいか恐怖心は人々に刻み込まれた。「ああ、これは死んでしまう病気なんだ」としっかりと理解するまでにはあの日の夜から時間はさほど掛からなかった。

地球が怒って発生させたウイルスによって人口がは減らされて行くと言う話は興味深い。

どれだけ自分たちが住むこの地球にここ数十年だけで負荷をかけ傷付けて来ただろうと考えると、その大きなしっぺ返しを人間は受け入れないとダメなのかも知れないのだけど。


でも、そうだったしてもやはり【】を仕方ないとは受け入れられない。もはや人間の力では及ばないところの話だとしてもだ。


その話は考え方の部分でなるほどと思ったから、そのときは頷いていたものだ。大きく同意とまではいかないけども。


残念ながら抵抗出来る力は人々には僅かしかない。恐怖もたくさん感じている。今だって見えない未来に怯える人が世界中にいる。


自分にはどうしようもないことだとしても《仕方ないからと言って受け入れる》ことからは抵抗したい。

いつかきっとってどうしたって信じているから。


「本当に頑張ったね」とマスクを外して笑いあえる日が来る。これが世界中の希望であり願い。


そんなときが来るから、そのときまで人に【死】に仕方ないとは言いたくないよ。

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