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また暗く静かな街へ

【750】

投げ振ったサイコロの目を希望にしたら”ふりだしに戻る”って出たみたいに。でも、もうふりだしなんかじゃないとは思うのだけど。

ただの”一時停止”かなんかの合図。その程度だと思っていたい。

そうじゃないと心が持たないよ。いつまでも怯え続けて、くらしは平常運転に戻れやしない。
もういいだろうと何度思ったのだろう。
もう勘弁してくれって何度投げやりなきもちになっただろう。

期待だとか、希望だとか。
もう叶えさせてくれたっていいじゃないか。
みんな同じ気持ち。きっとそうだ。

一人走る車の大通りは20時過ぎでもそれなりの交通量。
夕飯を作る気もしないこんな夜は、チープなものでもいいからサクッと食べて帰りたい気分になる。

5分とちょっとして着いた某牛丼店。
止まっている車両の数は多くはない。元々混み合う店舗じゃないから、逆に空いててラッキー、そんな感じで入店する。

入るとガランとした空気が広がって僕のことを迎えた。右側には簡易的なホワイトボードで『19:45ラストオーダーになります』と書かれてる。

「ああ、そうか」

合点がいったのは今日からまた始まった暗い夜の日々。
せめてものテイクアウトで買ったそれの温かさは、なんだか有り難みすら感じる。人の温もりや触れ合い、コミュニケーションの全て。
そう言うものを遠慮なしに根こそぎ奪い去る。

よく見るとやけに暗い大通りだ。あちこちに点々とある飲食店は「わかりましたよ」と言わんばかりにしょんぼりと店を閉め灯りを消して。
人の気配のボーダーラインは21時。ここでシャットアウトされる夜。

いなくなった訳じゃない。だけど、いなくなったよう物悲しさがまた始まってしまった。
期間限定。この言葉は本当なら好きな人が多いはずなのにな。

今はこの期間限定の閉ざされた夜が嫌いだ。

心の闇に照らすのは希望の灯火。
まだ消えぬようにそっと祈って。もう少しだからって。

人は誰もこの夜を愛せやしない。

光と笑いと人のいる気配のする街の景色が愛しいものだ。もう少し。
もうそんなセリフは誰に向けていいのか解りゃしないって。

帰宅してすぐ、冷める前に右手の箸で掻き込む。終わりはいつか来るからと誰でもないこの街に言い聞かせながら。ただ無言でそれを思いながら。

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