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宮大工志望の10歳次男、精巧な建築模型を観る。

穏やかな快晴で、2月にしては、かなり春めいた陽気の週末。

トーハク(東京国立博物館)で開催された、特別展「日本のたてもの―自然素材を活かす伝統の技と知恵」に足を運んだ。昨年末の公開開始から、ずっと気になっていた展覧会。国立科学博物館と国立近現代建築資料館とも連動して開催されていたものだけど、結局、会期終了間際に、最後まで開催していたトーハク会場に駆け込む形になった。他の2会場には、結局行けずじまいになってしまった。

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というのも、この展覧会には、家族で観に行きたかったから。家族全員の都合や体調が合わず、さらに事前予約をしなければ入れないので、なかなか予定を組みづらかった。

家族で観に行った理由のひとつに、10歳の次男坊の希望があった。彼は、かなり前から、大工さんになるのが将来の夢。それも、普通の大工ではなく、宮大工。そう、神社・仏閣の建設と保守、さらには歴史的に重要な国内の木造建築物の修復を担う、非常に専門性の高い、あの宮大工だ。

何がきっかけで、彼が宮大工を志すようになったのか、実はよくわからない。物心ついた頃から工作ばかりしている次男は、幼稚園でも"職人"扱いを受けていた。大工さんの労働組合主催の土建祭りに参加しても、その道具さばきに、筋が良いと感心された。我が家のリフォームをした時も、大工仕事を手伝ったほど(寛大な大工さんに感謝!)。彼にとって、大工職人が、ごく自然に希望する職業であることは、想像に難くない。隣家が工事中の時も、わざわざ見学させてもらい、うちとはまったく関係ないというのに、自作のスチレンボードの建築模型を、隣で働いている大工さんに見せに行ったぐらいだ。

神社や仏閣は、釘などの金具を使わない木組み工法で作られる。

実は、我が家にも木組み工法で作られたものがある。子供部屋のロフトに上がるためのハシゴだ。下の写真は、担当の大工さんが作ってきてくれたハシゴを前に、設置面に貼るクッション材を切り出している子供たち。数年前のリフォームで、うちのことを知っていた大工さんが、子供たち用の仕事を残しておいてくれたのだ(寛大な大工さんに感謝!)。

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話をトーハクにもどす。

「日本のたてもの」展では、数々の国宝建築物の模型が、神社・仏閣、民家、城郭などのくくりで展示されている。模型はだいたいが1/10スケール。断面や内部構造まで見せてくれているのだけど、その精巧さには仰天した。

屋根裏に見える梁や柱の組み方はもちろん、それぞれの細部のジオラマ的な再現も見事だ。のぞき込んでいるうちに、ドローンで撮影した映像を観ているかのような錯覚におちいる。

わたしは建築をきちんと学んだことがない素人だ。だけど、「ああ、ここの斜めの梁があるからこれだけの屋根が支えられているんだな」といった具合に、構造上のつくりについても感覚的に捉えられる気がした。建物自体のつくりに感心しながら模型を観察していて、ふと、模型を実物かのように観ている自分に気がつく。日本建築の伝統技術もだけど、何気に、この模型の製作技術も凄すぎやしないか。鑑賞者をそこまで没入させてしまう展示も凄すぎやしないか。何もかもが凄すぎて、"凄い"以外の語彙が出てこない(百聞は一見に如かず。展示内容は、以下の公式サイトで観られます)。

展示会場は、一部をのぞいて写真撮影が可能だった。宮大工志望の次男は、彼なりにスマートフォンを使って取材していたようだ。下は、東村山の正福寺地蔵堂の断面を取材中の次男。放射状の斜めの梁が面白い。

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彼の関心の中心は、やはり構造だったので、もっぱら模型を観ていた。けど、パネル展示の正倉院の校倉造の説明から、木材の素材としての特徴にも関心を持ったみたいだ。あとでトーハクのブログを見ていたら、表慶館の裏手に校倉造の旧十輪院宝蔵があるらしい。見逃した!こちらはずっとあるので、次の機会に見てみよう。

ショップで売られていた模型の数々にも興味津々だったけど、とても彼のお小遣いで買える値段ではなかった(親にとっても高額)。ならばもう一度観ておこうというわけで、妻と長男を外で待たせて、再入場。わたしと次男で、もうひととおり展示を観てきた。

トーハクのあと、同じ模型でもプラモデルを探しに秋葉原までみんなで歩いた。子供たちにとっては、そっちも重要。慣れない都会をたくさん歩いて、ちょっと疲れたけど、いろんな模型が印象に残る週末になった。

最後に、トーハクの展示から、石山寺の多宝塔。実はこの多宝塔、一昨年にわたしが描いた油絵《早春の石山寺》の遠景に、ちょっとだけ登場している。という話を、展示の前で子供たちに話したんだけど、あまり実感がないようだ。彼らも石山寺には行ったんだけどなぁ。

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