「緊急事態宣言の延長」に際して政府当局者は小欲を捨てて大欲を実現できるか

昨日菅義偉首相は記者会見を行い、5月31日(月)に期限を迎える9都道府県に発令中の新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言について、6月20日(日)まで延長することを表明しました[1]。

現在の緊急事態宣言が発令された今年4月下旬から5月上旬に比べれば、対象となる地域における新型コロナウイルス感染症の新規の感染者数が減少しているとはいえ、所定の基準に従えば依然として厳しい状況が続いていることに変わりはありません。

そのため、緊急事態宣言の適用期間を延長することは、感染のさらなる拡大を防止するという点で適切な措置と言えるでしょう。

一方で、菅首相は既に外国からの観客の受け入れの中止が決定している東京オリンピック及びパラリンピックについて、日本国内の観客を受け入れる意向を示しています[1]。

確かに、菅首相が演説の中で言及したように、プロ野球やサッカーJリーグのように5000人までないし定員の50%まで来場者を受け入れている催事では、観客の中で大規模な集団感染が発生したという事例は報告されていません。

その意味で、「プロ野球やJリーグが大丈夫だから、オリパラも大丈夫」という考えには一定の合理性が存するかのように思われます。

しかしながら、「五輪では国内の人の流れの抑制がコロナ感染者の増加を防ぐために重要」といった趣旨の推計[2]もなされている中で、あえて感染者の増加をもたらしかねない措置を講じることは、長期的な視点に基づく判断とは言い難いものです。

それだけに、菅首相をはじめ当局者に求められるのは、「オリパラでは国内の観客の受け入れは可」という小欲を満たすのではなく、感染の拡大に繋がる対応を避け、新型コロナウイルス感染症の早期の終息を目指すという大欲の実現であると言えるでしょう。

[1]緊急事態延長を決定. 日本経済新聞, 2021年5月29日朝刊1面.
[2]藤井大輔, 仲田泰祐, 五輪開催の感染への影響:定量分析. 日本でのCovid-19と経済活動, 2021年5月21日, https://covid19outputjapan.github.io/JP/files/FujiiNakata_Olympics_Slides_20210521.pdf (2021年5月29日閲覧).

<Executive Summary>
What Is an Important Attitude for Prime Minister Yoshihide Suga to Overcome the COVID-19 in Japan? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Yoshihide Suga made a speech to extend the period of the State of Emergency for 9 prefectures until 20th June 2021 on 28th May 2021. In this occasion we examine what is an important attitude and viewpoint for officials to overcome the COVID-19.

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