「最後の勝利を得るために清く美しく闘った」仙台育英学園高等学校と下関国際高等学校を讃える

本日、第104回全国高等学校野球選手権大会の決勝戦が行われ、仙台育英学園高等学校(宮城県代表)が下関国際高等学校(山口県代表)を8対1で破り、東北地方の高等学校として春夏の退会を含めて初めての優勝を達成しました。

1915(大正4)年の第1回大会で旧制秋田県立秋田中学校が決勝戦で旧制京都府立第二中学校に敗れて以来、2018年の秋田県立金足農業高等学校に至るまで合計12回にわたり準優勝に留まった中で念願の優勝を実現したことは、高校野球史に残る快挙です。

また、序盤では攻勢をかけ、仙台育英高校に先制点を許しながら7回表までは挽回の機会を窺いつつ試合を進めた下関国際高校も、山口県の高校として64年ぶりの優勝を目指すにふさわしい姿を示しました。

結果として7回裏に仙台育英高校が満塁本塁打を含む5点を挙げたことで試合の大勢が決まったものの、下関国際高校の粘り強い打線が最後まで勝負を諦めなかったことで、8対1という結果以上に見ごたえのある試合になりました。

ところで、今大会は優勝候補の筆頭であった大阪桐蔭中学校高等学校が準々決勝で敗れたほか、決勝戦は勝てばいずれも初優勝という学校同士の対戦でなったことなどは、一面においてどれほどの強豪校でも一瞬の判断の迷いや失策などで敗退するトーナメント方式の特徴が表れたいえるとともに、他面では出場各校の間で総合的な力量の均衡がある程度実現していたことを推察させます。

もちろん、猛暑、酷暑という劣悪な環境の中で試合を行うことや、過密な日程など、「甲子園」の持つ問題は年を追うごとに大きな問題となっています。

それだけに「甲子園改革」は不可避であり、日本高等学校野球連盟や関連機関には、検証可能な情報に基づき、予断を排してよりよい制度を確立することが求められます。

しかし、そうした「甲子園」を巡る問題は今回の仙台育英高校の優勝の価値には何らの影響を与えないことは明らかですし、「東北勢初」や「山口県勢として64年ぶり」といった表現は今回決勝戦に進んだ両校の選手にとっては副次的な要素であって、一人ひとりの選手にとっては持てる力を遺憾なく発揮できたか否かこそがより重要な点であることも疑いえません。

こうした点からも、今回の両校は「最後の勝利を得るために、清く美しく闘う」[1]という意味での「勝利至上主義」を実践したのであり、試合に出場した選手も控えの選手も、すべての選手の健闘を讃える次第です。

[1]川本信正, クーベルタンの寝言. 読売新聞, 1936年4月21日朝刊4面.

<Executive Summary>
Celebrating the Victory of the Sendai Ikuei Gakuen High School at the 104th Japanese High School Baseball Championship (Yusuke Suzumura)

The Final Game of the 104th Japanese High School Baseball Championship is held at the Hanshin Koshien Stadium on 22nd August 2022 and the Sendai Ikuei Gakuen High School defeated the Shimonoseki International High School. On this occasion we celebrate this historical achievement and a meaning of the result.

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