「TPP加盟申請」は中台の新たな角逐をもたらすか

本日、台湾の蔡英文総統が環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership Agreement: TPP)への加盟の申請を行ったことを表明しました[1]。

2016年に就任して以来TPPへの加盟を希望してきた蔡総統にとって、9月16日(木)に中国が加盟を申請したことが契機となり、今回の措置となったことが推察されます。

中国はすでにTPP事務局を担当するニュージーランドに申請の書類を提出しています[2]。そのため、台湾の申請は「一つの中国」の原則に反するだけに、中国が強硬に反発することは確実です。

一方、中国の申請に対するTPPに加盟する11か国の反応は様々で、シンガポールとマレーシアが歓迎の意向を表明したのに対し、メキシコやオーストラリアが難色を示しています[3]。

加盟の諾否は全会一致となるため、今後中台の申請の扱いを巡り、加盟国間の調整が重要となりますし、中台のうちとりわけ中国による圧力がどの程度まで加盟国に対して加えられるかも注目されます。

それとともに、貿易円滑化や衛生植物検疫から競争、労働、投資、さらには紛争解決やキャパシティ・ビルディングまで様々な分野を網羅するTPPの制度や水準を中国が受け入れるか否か、あるいは基準を緩和するのか否かといった事項が現実的な問題となります。

しかも、当初はシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの4国で始まった経済連携の枠組みが2009年11月にオバマ政権の参画表明によって米国主導の経済圏へと変化したことを考えれば、想定される対抗勢力である中国の加盟は、TPPの性格そのものを変えることにならざるを得ません。

加盟国は今後、経済だけでなく安全保障の分野でも存在感を高める中国との関係を視野に入れつつ、中台による加盟申請に対処することになります。

その意味でも、中台によるTPPへの加盟の申請への対処を巡る、今後の動向が注目されるところです。

[1]台湾、TPP加盟申請を発表 中国反発でも加入に強い意欲. 日本経済新聞, 2021年9月23日, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM230B00T20C21A9000000/ (2021年9月23日閲覧).
[2]台湾、TPP加盟申請. 日本経済新聞, 2021年9月23日朝刊1面.
[3]対中、迫られる踏み絵. 日本経済新聞, 2021年9月23日朝刊3面.

<Executive Summary>
Is the TPP a New Battlefield of China and Taiwan? (Yusuke Suzumura)

The Taiwan Government announces that they submit a membership application of the Trance Pacific Partnership Agreement (TPP) on 23rd September 2021. It seems that a new battle field of China and Taiwan, since China submitted an application on 16th September 2021 and it is not acceptable for them to permit Taiwan's entrance.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?