岸田首相は衆議院の解散問題で「聞く力」を発揮できるか

昨日新内閣が発足したことを受け、岸田文雄首相は衆議院を10月14日(木)に解散し、総選挙を10月31日(日)に実施する意向を表明しました[1]。

新内閣の発足から1か月と経たないうちに衆議院の解散総選挙を行うのは現行の憲法下では最短です。

特に候補者の調整を含む「野党共闘」が完了する前の段階での総選挙の実施だけに、関連する野党各党が岸田首相の意向を批判するのも[2]当然といえるでしょう。

今後、国会の代表質問において特に「野党共闘」を進める各党は「大義名分なき解散」、「解散権の私物化」といった批判を行うことが予想されます。

このとき、岸田首相は1979年10月に行われた総選挙に関し、当時の大平正芳首相が衆議院の解散を批判する野党に対して「政局の一新」と指摘するのみであったこと[3]に倣い、「政局の一新を図る」と答えることになるでしょうか。

その一方で、岸田首相にとっては、野党が選挙態勢を整える前に機先を制し、自民党内で広まりつつあった「総選挙は11月」という見立てを覆すことで党運営の主導権を握り、新政権への関心が高い時期に与党で過半数の議席を確保する、という目的を同時に達成するためにも、早期の解散は合理的な判断となります。

従って、今後野党がどのように解散について批判を行うか、そして岸田首相がこうした意見に対してどのように応じるかは、これまで岸田首相が養ってきたとされる「聞く力」[4]を行政府の長としてどのように発揮するかが問われていると言えるでしょう。

それだけに、10月11日(月)から3日間にわたり行われる各党の代表質問はますます重要さを増すことになるのです。

[1]岸田内閣 発足. 日本経済新聞, 2021年10月5日朝刊1面.
[2]野党から批判. 日本経済新聞, 2021年10月5日朝刊4面.
[3]第八十八回国会衆議院会議録第三号. 官報号外, 1979年9月5日, 9頁.
[4]全国行脚 聞く力培う. 読売新聞, 2021年9月30日朝刊10面.

<Executive Summary>
Can Prime Minister Fumio Kishida Demonstrate His "Ability to Listen"? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Fumio Kishida pointed out that the House of Representatives will be dissolved on 14th October and the General Election may be held on 31st October 2021. In this occasion we examine a possibility of Prime Minister Kishida's ability to listen which is recognised as an important capacity for him.

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