「鈴木宗男氏の訪ロ問題」の問題点は何か

昨日、日本維新の会は党紀委員会を開催し、今月1日(日)から5日(木)にかけて党に必要な届出を行わず無断でロシアを訪問した鈴木宗男参議院議員から事情を聴取するとともに、委員会に先立って開催した役員会で処分の内容を馬場信幸代表と藤田文武幹事長に一任することを決めました[1]。

日本維新の会の首脳は、鈴木氏がウクライナ問題に関し、現地の報道機関に対してロシアの勝利を確信するかのような発言を行ったことを問題視しており、党の方針と異なるなどの理由から、同氏を除名する方向にあるともされています[2]。

確かに、所定の手続きがあるにもかかわらず必要な対応を行わなかったことは鈴木氏の瑕疵であり、応分の処罰を受けることは当然です。

また、手続きを行えなかった理由として、鈴木氏は訪ロが急遽決定したことを挙げているものの、参議院に対しては必要な書類を提出できたことを考えれば、妥当性を欠く説明と言わねばなりません。

一方、鈴木氏がロシアと深い関係にあることは突然明らかになったのではなく、長年にわたり広く知られたことであるという点を考えれば、今回の訪ロや動画内での発言について「党の考え方とは明らかに違う」という日本維新の会の吉村洋文共同代表の指摘[1]も説得的ではありません。

何か問題を起こすまではその行動を黙認するかのような態度を示し、ひとたび問題を起こすと除名を含む処罰を検討するというのでは、日頃から党の統制を図る意欲に欠けると非難されても仕方のないところです。

それ以上に問題なのは、訪ロの意義を「日ロ関係の重要性を考え、対話が必要だ」とする鈴木氏の発言[2]にも一定の合理性があるものの、現在、国会議員の中でロシアとの対話を実際に行えるのが鈴木氏のみであるという点です。

もとより、鈴木氏がロシアとの間で密接な関係を築いた背景には過去の汚職事件のように、ロシアの関係者と密接な間柄になったという経緯を考えなければなりません。

それでも、現在、そのような鈴木氏以外に確かな関係をロシアの政治家との間に持つ国会議員がいないという状況が憂慮すべきものであることに変わりはありません。

その意味で、今回の鈴木氏の訪ロ問題を契機に、国会議員の中で同氏が独占的に確保しているというべき対ロ関係の窓口の役割が見直され、参入の障壁が低くなるとすれば、今回の一件の持つ意義は決して小さくないと言えるのです。

[1]鈴木宗男氏処分代表らに一任. 日本経済新聞, 2023年10月7日朝刊4面.
[2]鈴木宗男氏 除名へ. 朝日新聞, 2023年10月7日朝刊4面.

<Executive Summary>
What Is the Meaning of House of Councillors Member Muneo Suzuki's Visit to Russia? (Yusuke Suzumura)

House of Councillors Member Muneo Suzuki of the Japan Innovation Party (JIP) went to Russia from 1st to 5th October 2023 and the party aimes to punish his activity which is said that quite different from party's recognition of the "Ukraine Issues". On this occasion, we examine the meaning Mr. Suzuki's visit to Russia and the responsivility of the JIP.

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