「少子化問題の打開」のために見逃せない「根本的な課題」は何か

去る6月3日(金)、厚生労働省は1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率が2021年は1.30となり、2016年以来6年連続で低下し、出生数も過去最少となったことを発表しました[1]。

1994年のいわゆる「エンゼルプラン」の導入に象徴されるように、政府は種々の少子化対策を施し、出産休暇や育児休暇の制度も世界的には最高水準となっています[2]。

その一方で、実際には2020年度の男性の育児休暇取得率は12.7%というように[1]、制度を拡充しても取得を促進する施策が停滞しているのも事実です。

あるいは、例えば「0歳児なら入りやすいが1歳児となると難しい」というように、年齢の違いによる保育園への入園の難易度の差があったり、あるいは育児休暇を取得すると育児休業給付金が支給されるものの取得以前の給与の満額が支払われるわけではないため、金銭的には収入の減少につながるという問題があります。

前者については特に女性の就業再開を妨げたり、入所できる保育園がないために転居を断念せざるを得ないなど、職業の選択や居住、移転の自由を阻害しかねません。

また、後者は、産前産後に多額の金銭の支出を伴うにもかかわらず、育児休暇を取得すれば収入が減少するために男女ともに育休を取得することが難しくなるといった現実的な問題をもたらします。

しかも、現在の少子化は、特に若年層における非正規雇用の増加と他の世代に比べて相対的に進む貧困化が、出産はもとより結婚をためらわせるという構造的な問題に多くを負う現象でもあります。

そのため、もし政府や各自治体が少子化を深刻な問題としてと理解するのであれば、出産を希望する人たちが懸念なく子どもを産み、育てられるよう、既存の考えや枠組みにとらわれない、一層大胆でより根本的な施策を実施する必要があります。

何より、少子化対策は単に合計特殊出生率の上昇にとどまらず、生まれた子どもが人となるまで長期にわたる対応が不可欠であり、文字通り時間との競争となります。

従って、当局者、とりわけ国政に与る国会議員諸氏は自らの政治家としての生命を賭す覚悟で事態の打開に臨むことが求められます。

[1]出生率 6年連続低下. 日本経済新聞, 2022年6月4日朝刊1面.
[2]夫も取得 将来への先行投資. 朝日新聞, 2020年12月31日朝刊19面.

<Executive Summary>
What Are Fundamental Problems of Japan's "Declining Total Fertility Rate"? (Yusuke Suzumura)

The Ministry of Health, Labour and Welfare announces that Japan's total fertility rate of 2021 is declined for the sixth consecutive year on 3rd June 2022. In this occasion we examine fundamental problems for the issue.

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