岸田文雄首相の第213回国会における施政方針演説はどのように評価できるか

昨日、岸田文雄首相が衆参両院の本会議において施政方針演説を行いました[1]。

現在の日本社会において喫緊の課題である令和6年能登半島地震を最初に取り上げ、被災地の復興だけでなく現地を訪問した際の所感を明記したことは、非常災害対策本部長でもある岸田首相として当然の対応です。

また、2022年2月以来進む物価上昇について、賃上げと減税とを主な対策として挙げたことは、実現可能か否かは別として、日本に住む人々が日々実感する重要な問題に対する一つの解法を示したという意味で評価に値します。

一方、昨年来問題となっている自民党の政治資金問題については、岸田首相が自ら先頭に立って派閥を「お金」と「人事」から完全に決別した政策集団とし、政治改革を継続する旨を表明したものの、自民党内の問題を国政政党一般に敷衍するかのような態度は、問題の所在をあいまいにするだけでなく、どこまで自民党の廓清に真摯に取り組むか、その意欲を疑わせるものです。

それでも、安全保障問題において防衛力の強化を強調し、皇位の安定的継承の問題に取り組む意欲を示し、大阪・関西万博の主要な費用について外部の専門家の知見も活用し、適正性の確保を訴えるなど、政権として種々の課題に本格的に取り組む意思を示したことは見逃せません。

何より、「新しい資本主義」という岸田首相にとっては重要ながら内容の判然としない用語の利用が1回のみに留まるとともに、過去10年間の施政方針演説で散見された古典や故事からの恣意的な引用を行わず、2016年の熊本地震を参照して能登半島地震からの復興への決意を示したことは、岸田首相が長期政権への意欲を十分に持っていることを推察させるものです。

その意味で、今回の施政方針演説はいくつかの容易に目につく問題点を抱えつつも、おおむね妥当な内容になったと言えるでしょう。

[1]第二百十三回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説. 首相官邸, 2024年1月30日, https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2024/0130shiseihoshin.html (2024年1月31日閲覧).

<Executive Summary>
Prime Minister Fumio Kishida's Policy Speech Became the Moderate (Yusuke Suzumura)

On 30th January 2024, Prime Minister Fumio Kishida made his Policy Speech at the both Diets. On this occasion, we examine a meaning of the speech.

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