発表された「万博の主要8パビリオン」の問題は何か

昨日、2025年国際博覧会、いわゆる大阪・関西万博の運営主体である2025年日本国際博覧会協会が中核となる8つのパビリオンの基本計画を発表しました[1]。

計画では新型コロナウイルス感染症の感染拡大後の社会のあり方を提示する企画が紹介されました。

大阪・関西万博は2021年10月から2022年3月まで開催されたドバイ万博のような国威発揚型ではなく、日本が抱える高齢化などの問題の解決方法を模索する課題解決型を目指すとされています[1]。

今回の計画では、万博招致時に「2025年大阪・関西万博がめざすもの」[2]として掲げられた「国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)が達成される社会」と「日本の国家戦略Society5.0の実現」に比べれば、より具体的な内容が提示されていると言えるでしょう。

また、具体的な内容を伴うことによって、今も掲げられる目的との間に相違が生じているのは、招致活動の前後で「コロナ禍」に代表される国際社会の変化を踏まえた、現実的な対応ということが出来るでしょう。

その意味で、今回の計画は、抽象的な理念を現在のわれわれを取り巻く状況に即して稠密化したと言えます。

一方で、8つのパビリオンにプロデューサーとして携わる人々の顔触れは新鮮さに乏しいものです。

東京オリンピックの運営に参加した人を含め、すでにある程度の知名度を有する人物を起用することで大過なく万博を迎えようとするのは、実務的な観点からは適切と考えられます。

あるいは、プロデューサーによって示された方向に従い、実際の職務を遂行するのは大阪府や大阪市、あるいは関西の経済界などから派遣された人たちであり、プロデューサーには知名度が最も優先して求められるかもしれません。

しかし、こうした態度は、すでに東京オリンピックの際に示された理念の欠如とその後の混乱につながるものです。

さらに、すでに一定の知名度を獲得した人物に依存することで新たな人材の起用が停滞するようであれば、「万博後」の長期的な展望が不足していると言わざるを得ません。

そのような意味において、今回の基本計画の発表は、大阪・関西万博への期待を抱かせるよりは、むしろ今後いかにして人々の注意を喚起するかへの懸念を抱かせるものであったと言えるでしょう。

[1]万博、コロナ後の社会提案. 日本経済新聞, 2022年4月19日朝刊2面.
[2]開催目的. 2025年日本国際博覧会協会, 公開日未詳, https://www.expo2025.or.jp/overview/purpose/ (2022年4月19日閲覧).

<Executive Summary>
What Is a Meaning of the Presentation of the Master Plan of the Expo 2025 Osaka Kansai? (Yusuke Suzumura)

The Japan Association for the 2025 World Exposition announces the Master Plan of the Expo 2025 Osaka Kansai on 18th April 2022. In this occasion we examine a meaning of the plan.

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