今後の「菅政権のコロナ対策」は「菅首相の退陣決意」の真の理由を教える

昨日、自民党総裁選挙への不出馬を表明して事実上退陣することとなった菅義偉首相は、内閣支持率が低迷し党内から総選挙を戦うことができないという声が上がりつつあったのも事実です[1]。

しかも、総裁選の前に総選挙を実施することで自民党内に「菅おろし」が起きるのを牽制し、党内の引き締めを図るという手法も、新型コロナウイルス感染症の拡大が続き、解散の時期の見極めが難しい現状では、日程の選択の余地が乏しくなるばかりでした。

これに加えて総裁選への出馬を表明した岸田文雄前政調会長が二階俊博幹事長の交代を迫ったことは、菅首相にとっては重要な後ろ盾である二階氏との関係を悪化させず、しかも二階氏の影響力が強く残るとみなされる人事を行わないという難問を解決するという新たな課題を突き付けました。

しかし、自民党の総裁選の歴史を振り返ると、現職の総裁が出馬して落選したのは1978年の福田赳夫首相のみでしたから、菅首相は出馬を決意さえすれば当選する蓋然性は高いと言えます。

それにもかかわらず出馬を辞退したことは、何を意味するでしょうか。

もし、新型コロナウイルス感染症対策に専念したく、総裁選とコロナ対策は両立しないという趣旨の菅首相の発言[2]にいくばくかの真実が含まれているとすれば、今後政権は任期中にあらゆる手段を用いて対策を講じることになるでしょう。

それとともに、安倍晋三前首相の予期せぬ時期の退陣により急遽政権を引き継ぐことになった菅首相が、どのような方法を用いるとしても十分な成果を上げにくい状況に直面し、「棚からぼた餅でもらった政権だったから、『もういいや』と思った」[3]としても不思議ではありません。

その意味で、菅首相が退陣を決意した真の理由の一端は、今後の政権の動向からも推察されることになるでしょう。

[1]菅首相、退陣へ. 日本経済新聞, 2021年9月3日夕刊1面.
[2]菅首相 退陣へ. 日本経済新聞, 2021年9月4日朝刊1面.
[3]御厨貴監修, 渡邉恒雄回顧録. 中央公論新社, 2007年, 375頁.

<Executive Summary>
How Can We Understand a True Reason of Prime Minister Yoshihide Suga's Announcement of Resignation? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Yoshihide Suga will not run for the LDP Presidential Election and leave the position of the Prime Minister. In this occasion we examine how can we understand a true reason of his resignation.

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