「給付金問題」について岸田文雄首相には何が求められるか

本日、自民党と公明党の幹事長は今月19日(金)にまとめる予定の新たな経済対策を巡る協議を行い、18歳以下に10万円相当を給付することで合意するとともに、対象の所得制限を巡り引き続き検討することになりました[1]。

与党による給付金の支給については、18歳以下という対象年齢の妥当性や所得の状況による対象の制限を求める声もあり[2]、今後さらなる交渉が行われることが予想されます。

ところで、今回の給付金の案は岸田政権の経済対策に対し、衆議院議員選挙で「未来応援給付」を公約とした公明党が要求したものです。

それだけに、自民党としては良好な関係を維持するためにも公明党の主張を聞き入れつつ、細部を修正することで妥協することになるでしょう。

一方で、給付金の支給については、安倍政権時代に行われた10万円の一律給付の多くが貯蓄されたため、家計への直接的な寄与という点で劣るという意見があります[2]。

もとより、前回といい今回といい、10万円という給付額は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により困窮した家計を支えるには十分とはいえず、一時的な下支えという域を出ないかも知れません。

しかし、重要なのはこうした給付を通して「国や政府は人々を見捨てない」という態度を明示することですし、前回の給付金の究極的な効果もこの点に求められます。

その意味で、今回の給付金の問題も最終的に政権として何を目指すのかという点を明らかにしなければ、所得制限や対象年齢といった点に注目が集まり、所期の目的を達成することが難しくなりかねません。

従って、岸田文雄首相に求められるのは、説明すべきことを説明し、適切に受け止められる態度であり、給付金問題は首相就任後に手腕の試される、最初の大きな関門と言えるでしょう。

[1]現金給付・クーポン各5万円 自公、所得制限は検討継続. 日本経済新聞, 2021年11月9日, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0942F0Z01C21A1000000/?n_cid=BMSR2P001_202111091323 (2021年11月9日閲覧).
[2]18歳以下への一律給付金はやめよ. 日本経済新聞, 2021年11月9日朝刊2面.

<Executive Summary>
Will Prime Minister Fumio Kishida Explain a Meaning of the Benefit? (Yusuke Suzumura)

Today the Secretary-Generals of the Liberal Democratic Party and the Komeito agree to pay benefits. In this occasion we examine a meaning of paying benefits for Prime Minister Fumio Kishida.

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