「英語を除く外国語検定の存続の危機」の報で思い出す「第二外国語」をめぐるいくつかの出来事

報道によれば、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、英語を除く「第二外国語」の検定試験が試験の中止により受験料収入を得られず、今後の見通しも立たないなど、厳しい状況に立たされています[1]。

専門家は、異文化や多様な価値観に触れる幅広い語学教育の機会が失われかねないと、事態を懸念しているとのことです[1]。

ところで、私は、大学学部時代の「第二外国語」としてドイツ語を履修しており、「第三外国語」としてフランス語を、さらに大学院に進学してから「第四外国語」として古典ギリシア語を学びました。

私がフランス語を学んだのは大学3年生の春休みのことであり、古典ギリシア語は最初の修士課程1年目から2年目にかけてのことでした。

大学3年生の春休みにフランス語を学んだのは、大学1年生の必修科目である基礎演習の時からお世話になっていた先生から「大学院に進むならドイツ語だけでなくフランス語も出来た方がよい」と助言を受けたためで、朝倉季雄先生の『朝倉初級フランス語』(白水社、1965年)を買い求めて独学自習しました。

1999年4月からはこの先生の主催するサブゼミに参加してベルクソンの著作を読み進めることになり、ベルクソンの平易ながら力強い文体に感心しながらも、独学自習の悲しさゆえに発音の習得に難があり、原文の音読の際にはしばしば私の学習の未熟さを示したものでした。

一方、最初の大学院修士課程1年生であった2000年度に、「古代哲学史演習」に参加したことが、古典ギリシア語を学ぶ契機となりました。

すなわち、この演習では、ローブ古典叢書から出版されていたプラトンの著作の希英対訳本を講読し、古典ギリシア語の既修者は原典を、未履修者は英訳を訳出するというものでした。

しかし、最終的に出席者が古典ギリシア語の未履修者のみとなったため、担当の先生から「折角だから、夏休みの間にギリシア文字の発音だけでも覚えたらよい」と提案され、私も貴重な機会と考えてギリシア文字の発音を覚え、2000年度後期からは最初は1行、やがて2行、3行と、回を追いつつプラトンの原典を音読するようになりました。

ただ、フランス語の際に文法書のみでは発音を完全に修得するのは難しいと実感しただけに、古典ギリシア語の際は学部で開講されていたギリシア語の講義を履修し、田中美知太郎先生と松平千秋先生の『ギリシア語入門』(改訂版、岩波書店、1983年)を教科書として学んだものです。

私の古典ギリシア語の能力はきわめて怪しく、ローブ古典叢書のプラトンの著作について、1ページを訳出するのに1日かかるような具合でした。

また、フランス語についても、2010年以降に発音の根本的な矯正を受けることになるなど、一知半解の域を出ないものです。

それでも、仏文法を学んで英文法への理解が深まり、古典ギリシア語を通して言葉への関心そのものが高まったのは、私自身にとって紛れもないことです。

英語以外の外国語に接する機会としての「第二外国語」や「第三外国語」以降の言語の持つ意味は大きく、各種の外国語の検定試験が学習者の意欲形成に果たす役割も小さくないものです。

それだけに、英語を除く外国語の検定が迎える存続の危機が、一日も早く解消されることが願われます。

[1]英語除く外国語検定 存続の危機 コロナで中止. 日本経済新聞, 2020年8月27日, https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63130300X20C20A8CC1000/ (2020年8月27日閲覧).

<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Second Foreign Languages (Yusuke Suzumura)

It is reported that an examination of the second foreign languages except English is facing severe conditions by an outbreak of the COVID-19. In this occasion I remember miscellaneous memories of second foregin languages.

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