菅義偉首相に求められる「国民との対話」に積極的に取り組む姿勢

去る8月2日(月)、政府は新型コロナ言う留守感染症の感染が急拡大する地域では入院対象を重症や重症化の危険性の高い患者に重点化し、それ以外は自宅療養を基本とする方針に転換しました[1]。

今回の措置は重症化の危険性の高い人を中心に幅広く入院するという従来の原則からの転換であり、新型コロナウイルス感染症に対応した病床数の積み増しが進まない状況を受けたものです。

一面において実態に即した柔軟な対応ではあるものの、他面においては症状を定期的に確認し、急変を察知する体制の確立がなければ自宅療養を行う人が必要な治療を受ける機会を失いかねないだけに、当局には「原則として自宅療養」と方針を示すだけでなく、示された方針を実現するために不可欠な対応を確実にすることが求められます。

それとともに、当局には積極的な情報の発信が求められるところです。

もとより官公庁の枠を超えて、一人ひとりの担当者は昼夜を問わず寸暇を惜しんで事態の改善のために奮闘しています。

その一方で、種々の対策の最終的な決定に与る関係閣僚の発信する情報の内容が錯綜することが珍しくないとともに、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部長である菅義偉首相による国民への積極的な呼び掛けが乏しいことは懸念すべきものです。

特に菅首相は記者からの質問に直接の回答を示すことがなく、質問の趣旨とは異なる答えを示すなど[2]、状況を韜晦的な対応に終始して国民との対話を避けているかのように見えており[3]、政府の方針を国民によりよく伝えるという点では隔靴掻痒の感を免れません。

総務大臣時代以来、国会での答弁に不慣れであり、官房長官時代の記者会見でも記者の質問に的確に回答できないでいた菅首相であっただけに、にわかに態度を改めることが容易でないことは明らかです。

しかし、不利な質問や厳しい問いかけにも相応の回答を行うことは行政府の長に求められる態度であるばかりでなく、国民の信頼を得るためにも不可欠となります。

それだけに、菅首相には改めて国民との対話に積極的に取り組み、信認を得る努力を怠らないことが求められるのです。

[1]「疾患ある患者は入院」. 日本経済新聞, 2021年8月4日朝刊1面.
[2]新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見. 首相官邸, 2021年7月8日, https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0708kaiken.html (2021年8月4日).
[3]鈴村裕輔, 記者会見で「緊急事態宣言下での五輪開催の大義名分」を説明する機会を逸した菅義偉首相. 2021年7月9日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/a71e6a2044a604aac14a8368e24f5735?frame_id=435622 (2021年8月4日閲覧).

<Executive Summary>
Prime Minister Yoshihide Suga Has to Spare no Effort to Promote Conversation of the COVID-19 with Citizens (Yusuke Suzumura)

It seems that Prime Minister Yoshihide Suga always avoids an opportunity to talk problems of the COVID-19 with citizens. In this occasion we want him to spare no effort to promote conversation with citizens as the leader of Japan.

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