「3度目の緊急事態宣言の発令」の持つ意味は何か

本日、東京都、大阪府、京都府、兵庫県に対して、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が発令され、20時から菅義偉首相が記者会見を開いて談話を発表しました[1]。

記者会見の中で菅首相は4都府県に対して3度目となる緊急時事態宣言を発令することで住民や企業などの活動が制約されることを陳謝するとともに、感染の拡大を抑止するために人の流れを抑えることや出勤者の例年比7割減への協力を要望するとともに、医療体制の確保に向けた意欲を示しています。

「変異株」という言葉を除けば、昨年4月の第1回目の緊急事態宣言の発令に際して当時の安倍晋三首相の談話[2]と内容が類似しているという点は、「コロナ対策」の難しさを物語ります。

状況が異なるため、1年間で3度目となる緊急事態宣言の発令は止むを得ないとはいえ、この間、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の本部長である内閣総理大臣が国民に対して要求する事項に変化がないことは、一面においてわれわれが取り得る方策に限りがあることを示すとともに、他面においては有効な対処法が依然として確立されていないことを推察させます。

もとより、予防接種が効果的な方法ではあるものの、接種の優先度が最も高い医療従事者はもとより、罹患後の重篤化の可能性が高いとされる高齢者に対しても十分な接種が行われていないという現在の状況では、初期の限定的な対処法意外に選択の余地が乏しいこともうなずけます。

それでも、新型コロナウイルス感染症の対策について、医療の最前線で最善の努力を重ね、目の前の状況に可能な限り対応する人たちの献身的な取り組みに依存し、全体的な方針や取り組みの枠組みを決めるべき当局者が有効な施策を決定できないでいることも明らかです。

「1年経っても自粛要請ばかり」と言われかねない当局の新型コロナウイルス感染症対策を眺めるとき、われわれは柔軟で迅速な対応を阻む要因が何であるのか、あるいはどのような構造が効果的な対策を生み出しにくくしているのかを学ぶことでしょう。

そして、当局者がもしこうした事例に学ばなければ、残念ながら第4回目、第5回目と緊急事態宣言の発令は続かざるを得ないと言えるでしょう。

当局者に求められるのは、一方で「コロナ対策」を推進することであり、もう一方でこれまでの取り組みを振り返り、至らざるを確認し、改めるべき点を明らかにすることでもあるのです。

[1]【随時更新】菅首相 記者会見 4都府県に緊急事態宣言. NHK NEWS Web. 2021年4月23日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210423/k10012994261000.html?utm_int=error_contents_news-main_001 (2021年4月23日閲覧).
[2]新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見. 首相官邸, 2020年4月7日, https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0407kaiken.html (2021年4月23日閲覧).

<Executive Summary>
What Is a Meaning of the Third Declaration of the State of Emergency?z (Yusuke Suzumura)

The Third State of Emergency is declared for four prefectures including Tokyo on 23rd April 2021 and will take effect on Sunday. In this occasion we examine a meaning of this declaration for the officials.

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