悔やまれる日米首脳会談での菅義偉首相の「寸法の合わないスーツ」

4月16日(金)に行われた日米首脳会談の概要と意義については、先日の本欄で指摘した通りです[1]。

ところで、今回の日米首脳会談では、会談や共同声明の内容もさることながら、両首脳の服装の違いも気になるところです。

もちろん、ジョー・バイデン大統領も菅義偉首相も、ともに丁寧に仕立てられた背広上下を身につけている点は同じです。また、バイデン大統領が民主党を象徴する色である青色を基調として服装をまとめたのに対し、菅首相が青色のネクタイを用いたのは、両首脳が協調する姿勢を視覚的に強調したものと言えるでしょう。

一方、寸法が合い、胸にチーフを挿しネクタイのディンプルを綺麗に作るバイデン大統領と、体に合わない一回り丈の大きな背広上下を着た菅首相との印象の差は大きいものです。

確かに、首脳会談の成果や首脳の外交上の能力は服装ではなく、実際の交渉や真摯な対話によって評価されるものです。

それとともに、一国の元首や行政府の長にはその地位や役職に応じた品位と風格が求められるのも否みがたい事実であり、古来各種の権力者が重要な儀式や催事に際して盛装する目的の一つは、自らの権力の正当性を視覚的に訴えるという点に求められると言えるでしょう。

「バイデン氏も私もたたき上げだ」とバイデン大統領に対して自らの特長とする「たたき上げ」を強調した菅首相[2]としては、あたかも借り物であるかのように見える、袖も裾も丈が合わない服装の方が素朴さや質素さを演出できると考えたのかも知れません。

ただし、結果として服装という管理が可能な要素を通して不格好さや貧相な様子が日米両国の人々に印象付けられるとすれば、菅首相や日本の外交当局者がどのような意図を持っているとしても、そのような試みは不首尾に終わらざるを得ません。

それだけに、今後、関係者には菅首相が日本の行政府の長にふさわしい品位と風格を備えた服装で首脳会談に臨むよう、細心の注意を払うことが求められるのです。

[1]鈴村裕輔, 日米首脳会談の共同声明は「東京オリパラ」にいかなる影響を与えるか. 2021年4月17日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/f4f94ce6c9bf21c79e9fd87c2cdaa150?frame_id=435622 (2021年4月19日閲覧).
[2]首相が求めた「サシ会談」. 日本経済新聞, 2021年4月18日朝刊5面.

<Executive Summary>
What Is a Meaning of Prime Minister Yoshihide Suga's Clothing at the US-Japan Summit Meeting? (Yusuke Suzumura)

The US-Japan Summit Meeting was held on 16th April 2021 and Prime Minister Yoshihide Suga's clothing seems poor taste compared to that of US President Joe Biden. It might be an inadequate selection for Prime Minister Suga, since he could not emphasise his excellency, elegance or dignity as the Prime Minister of Japan with his clothes.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?