「延期後の東京オリパラの開催」に向けて求められる取り組みは何か

報道によれば、2021年に開催される予定の東京オリンピック・パラリンピックについて、新型コロナウイルス感染症への対策にかかる見通しの費用約900億円は政府を中心に負担し、延期に伴う追加費用約2000億円は東京都と大会組織委員会が主に負担する方向で調整されているとのことです[1]。

経費の増加は、ある意味で開催時期の延長に伴う当然のことと言えるでしょう。その一方で、11月18日(水)に大会組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)が行った会合では、東京オリンピックの開会式について規模の縮小や無観客での実施の可能性を提案した組織委員会側に対しIOC側は通常通りの開催を主張するなど、意見の隔たりが認められます[2]。

もちろん、両者が硬軟両様の主張を行うことで日本を含む参加国や各種競技団体の意向を図るために一種の役割分担を行っていることは容易に推察されます。

また、表面的には意見の相違があるとしても、裏面で交渉を進め、最終的な結論に至るであろうことも、考えられる選択肢の一つです。

しかし、政府が中心となって負担する新型コロナウイルス感染症対策関連の費用も、東京都が負担する追加費用も、いずれも国民や都民の税金を主たる原資とするものです。

そのため、既に策定されている予算も含め、新たに発生する経費について内訳を詳細に公表することは、国や都などにとっては納税者に対する説明の義務を果たすためにも必要最低限の措置となります。

さらに、街中や公共交通機関などで宣伝は行われているものの、現在のところ延期後の東京オリンピックとパラリンピックの開催を求める声は影を潜めている点も見逃せません。

大会の開催に向けた機運が低迷している中で、大会組織委員会や東京都、あるいは国が是非を問わず開催する態度を示すのは、IOCが中止に同意しないことやこのまま決行する方が経費の面でより安価で済むといった実務的な側面からは妥当と考えられます。

それでも、大会の延期の原因となった新型コロナウイルス感染症の拡大の状況が見通せないだけに、「人類がウィルスに打ち勝った証として、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催する決意」[3]と言うだけでは、人々が再び大会の開催を希望する機運が高まるべくもありません。

その意味でも、少なくとも今後発表される予定の追加費用の内訳や分担の割合が明確に示されることは、大会の開催の必要さを訴えるためにも不可欠の対応となるでしょう。

[1]五輪コロナ対策 900億円. 日本経済新聞, 2020年11月30日夕刊1面.
[2]五輪開会式、認識ズレ. 朝日新聞, 2020年11月19日朝刊1面.
[3]第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説. 首相官邸, 2020年10月26日, https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1026shoshinhyomei.html (2020年11月30日閲覧).

<Executive Summary>
What Is an Important Measure for the Authorities to Hold the Tokyo Olympic Games in 2021? (Yusuke Suzumura)

It is reported that additional expenses for measures to prepare the COVID-19 in the Tokyo Olympic Games might be over 90 billion yen on 30th November 2020. It might be remarkable attitude for the authorities who aim to hold the Olympics to disclose information concerning on the budget.

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