生成型AIによる「球団経営の自動化」が実現する日

去る6月5日(月)、日刊ゲンダイの2023年6月6日号27面に私の連載「メジャーリーグ通信」の第140回「生成型AIによる「球団経営の自動化」が実現する日」が掲載されました[1]。

今回は、生成型人工知能(AI)を大リーグ各球団が日々の経営の中でどのように活用しているかを、最近の事例に即して検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。


生成型AIによる「球団経営の自動化」が実現する日
鈴村裕輔

2022年末から、生成型人工知能(AI)に関する話題を聞かない日はないといってよいほどである。

しかも、あたかも真実であるかのように虚偽の内容を記載するといった正確性の問題だけでなく、既存の文献や画像などの剽窃といった著作権などの権利を侵害する事例は、人々に生成型AIの普及への懸念を抱かせる一因となっている。

5月16日に米国連邦上院の司法委員会において初めて生成型AIに関する公聴会が開かれたのは、AIそのものへの漠然とした不安が根強いことを物語る。

こうした社会の懸念に応じるかのように、公聴会では対話型AI「チャットGPT」を開発したオープンAIの最高経営責任者サム・アルトマンが、AIの安全性や倫理面で政府が積極的な介入を行う必要があると指摘している。

ところで、生成型AIが扱う分野は幅広く、スポーツも当然ながら対象となる。

最近では、「2000年以降の大リーグで最強の球団は?」「2000年以降のベストナインは?」といった問いに対するチャットGPTの回答が話題となるなど、大リーグもAIの話題とは無関係ではない。

各種の生成型AIは大量のテキストデータを使用して訓練されているため、入力されたデータに基づいて新たな情報を作成したり、質問に回答することしかできないし、常に最新の出来事について説明したり情報を提供することができないといった制約がある。

あるいは、固有の経験や意見はなく、全ては訓練によって得られた情報があるのみという点も、質問者の問いの意図や背景を汲み取ることを難しくしている。さらに、画像の認識や身体的運動などは実行できない。

そのため、過去の試合の結果を分析したり歴代の優れた選手の名前を挙げることは出来ても、目の前で行われてる試合の実況中継を音声で行うことは、現時点では難しい。

一方で、学習のために用いる情報を絶えず更新し、より多くのデータベースを参照させれば、定型的な業務を効率化することが可能になる。

例えば、スカウトが選手の評価と分析に用いるスカウティング・レポートなどは、チャットGPTが高い割合で信頼できることや、基本的な事項を踏まえた内容を作成できることが確認されている。

従って、スカウティング・レポートの作成を自動化することが出来れば、関連する作業に要する時間が削減され、その分だけスカウトや球団関係者が他の業務を行えるようになる。

これ以外にも生成型AIを利用できる事項があれば、「球団経営の自動化」という新たな変革がもたらされることになる。

それだけに、最初に生成型AIを全面的に取入れた経営を行うのはどの球団か、注目される。


[1]鈴村裕輔, 生成型AIによる「球団経営の自動化」が実現する日. 日刊ゲンダイ, 2023年6月6日号27面.

<Executive Summary>
The Day When the Generative AI Realise "Automatic Management" of the MLB Teams (Yusuke Suzumura)

My article titled "The Day When the Generative AI Realise "Automatic Management" of the MLB Teams" was run at The Nikkan Gendai on 5th June 2023. Today I introduce the article to the readers of this weblog.

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