【追悼文】シルヴィオ・ベルルスコーニ氏について思ういくつかのこと

昨日、イタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニ氏が逝去しました。享年86歳でした。

建設業と放送業で富を得て政界に進出し、保守政党フォルツァ・イタリアを率いて政権を獲得したことは周知のとおりです。

また、報道機関を活用した情報戦略や世界でも有数の資産家であることに由来する、資金力背景とした強権的な政権運営はしばしば独裁的であると批判され、様々な醜聞とともにベルルスコーニ氏に対する国民の不信感を醸成する一因となりました。

実際、私のイタリア人の友人や旧知の先生方は、何かのきっかけでベルルスコーニ氏に話題が及ぶと、一様に顔をしかめたものです。

私の知る限り、これらの人たちは普段から何らかの政治的な主張をすることは珍しく、どちらかといえば政治的な話題から距離を置いていただけに、五指に余る友人や知人の反応は大変興味深いものでした。

特に、ある人は、確か"Dice solo qualcosa."と、ベルルスコーニ氏が口先だけで実行力を伴った政策を行っていないと否定的な意見を示したほどでした。

一方、3度にわたって政権を担当し、イタリア史上最長となる9年にわたり首相を務めたことは、権力を手にすることも、手放すことも政権を維持し続けることに比べれば比較的容易であるという点を考えるなら、評価されるべきでしょう。

あるいは、2001年に2度目の政権を担当した際にはイタリア経済の成長や失業率の改善などを実現しており、必ずしも口先だけの政治家だけではなかったことを示しています。

ベルルスコーニ氏が巧みな手腕によって政権を維持したしたたかな政治家と評価されるか、権力を私物化した貪婪な首相とみなされるかは、今後の歴史家や政治学者の検討を俟たねばなりません。

それでも、ベルルスコーニ氏が1990年代以降のイタリア政界の中心の一人であり、同国を代表する存在であったことは間違いないところです。

それだけに、これからのベルルスコーニ氏の位置付けは、イタリアの人々の国や政治家、もしくは自らの理解との関係からも、大変興味深く思われます。

改めて、一代の傑物というべきベルルスコーニ氏のご冥福をお祈りします。

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Former Italian Prime Minister Silvio Berlusconi (Yusuke Suzumura)

Former Italian Prime Minister Silvio Berlusconi had passed away at the age of 86 on 12th June 2023. On this occasion, I express miscellaneous impressions of Mr. Berlusconi.

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