前原誠司氏の「国民民主党からの離党と新党の結成」はいかなる意味を持つか

本日、国民民主党の前原代表代行は離党届を提出し、自身を含む5人の議員で新党「教育無償化を実現する会」を結成することを明らかにしました[1]。

前原氏は今年9月の国民民主党代表選挙に立候補したものの現職の玉木雄一郎氏に敗れており、その去就が注目されていました。

代表選後、前原氏は玉木氏と手を取り合って一致結束をアピールし、「ノーサイドだ」と記者団に強調する一方、玉木氏が自公政権との連立に傾いた場合は「ノーサイドではない」と周囲に漏らすなど[2]、実際には離党の時期を模索していたことが推察されます。

実際、前原氏は離党の理由について、ガソリン価格の高騰が続く場合、税金を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除に邁進し、支持率の低い岸田文雄政権に近づきすぎていることを挙げています[1]。

これは、玉木氏の政権との距離の近さを批判することで、今回の行動を正当化しようとする思惑の表れに他なりません。

確かに、民主党政権時代には党内保守派の主要な閣僚として重きをなしていたものの、その後は民進党代表として希望の党との合流を進めたものの結果的に党が3つに割れたり、現在の国民民主党が結成された2020年9月に代表代行に就任したものの党内では反主流派に留まるために存在感も低迷したりと、苦しい立場に置かれていたのも事実です。

そのため、政治家として正念場を迎えていた前原氏が、劣勢から巻き返すために離党と新党の結成に動いたとしても不思議ではありません。

むしろ、政策面では近しいと言える日本維新の会が標榜する教育無償化を党名に掲げたことからも、早晩同党に同流するための予備的な組織として新党を結成したということは明らかです。

これは、一面において与党を補完する立場にある現在の国民民主党ではなく、来るべき衆議院選挙で野党第一党を目指す日本維新の会に入り込むことで、再度の政権交代を実現しようとする前原氏の素志の実現度を高めます。

そして、他面では、一時の勢いを失っている日本維新の会にとって、京都を地盤とする前原氏が加入すれば、従来大阪府以外の地域への浸透の度合いに力を欠いていた同党が新たな支持者を獲得する格好の機会となります。

それだけに、今後、前原氏の率いる新党がどのように行動するか、さらにその行動が政界にいかなる影響を与えるかは、大きな注目点となります。

[1]前原氏 新党「教育無償化を実現する会」結成を表明. NHK NEWS, 2023年11月30日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231130/k10014273161000.html (2023年11月30日閲覧).
[2]「自公国」へ壁多く. 読売新聞, 2023年9月3日朝刊3面.

<Executive Summary>
What Is the Meaning of Former Foreign Minister Seiji Maiehara's Resignation from the Democratic Party for the People and Formation of the New Party? (Yusuke Suzumura)

Foremrer Foreign Minister Seiji Maehara, the Deputy Leader of the Democratic Party for the People (DPP) and other four fellows resigned from the DPP and formed the new party for free education on 30th November 2023. On this occasion, we examine the meaning of this event focusing on the political isituation for Mr. Maehara.

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