【追悼文】畑正憲さんについて思い出すいくつかのこと
昨日、作家の畑正憲さんが逝去されました。享年87歳でした。
畑さんというと、「ムツゴロウさん」の愛称で親しまれ、フジテレビの『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』で広く知られる方でした。
私も、時折『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』を視聴し、「よーしよしよし」と動物の首回りをなでる「ムツゴロウさん」の姿と、様々な動物の生き生きとした姿を堪能したものです。
また、私が小学校低学年から中学年であった1980年代半ばは、デイビッド・アッテンボローが製作したNHKの『いきいき大自然』やTBSの『野生の王国』など、動物や自然を主題とする番組が19時台に放送されていました。
こうした番組を視聴しつつ『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』を観ると、より娯楽的な側面が強いと思ったものです。
ところで、当初は畑さんを動物に詳しい芸能人と思っていた私が、その本業が作家であると知ったのは1990年のことでした。
中学2年生の夏休みに母方の実家に帰省した際、廊下にあった祖父の書架の中に『ムツゴロウの世界博物志』(読売新聞社、1985年)の上下巻を見付け、筆者の名前が「畑正憲」と記されているの目にし、ようやく「ムツゴロウさん」が畑正憲さんであることを知ったのでした
情報の収集が容易になった現在からみれば大変に長閑な光景ではあったものの、「ムツゴロウさん」という芸能人ではなく畑正憲とい作家の相性であると気付いた時の意外な気持ちは、大変に新鮮なものでした。
その後はあきる野市に東京ムツゴロウ動物王国を開設するものの経営難から閉鎖するなどの苦境に直面しながら、ついには困難を乗り越えたのも、畑さんを知る上で欠かせない逸話です。
様々な生き物と直接接することが難しくなった現代社会にあって、動物とのふれあいの魅力と、時に恐ろしさを身をもって伝えた畑正憲さんは、他の追随を許さない存在であったと言えるでしょう。
改めてご冥福をお祈り申し上げます。
<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Mr. Masanori Hata (Yusuke Suzumura)
Mr. Masanori Hata, an author and zoologist, had passed away at the age of 87 on 5th April 2023. On this occasion, I remember some memories of Mr. Hata.