大阪・関西万博への理解と共感を得るために何がなされるべきか

昨日、2025年に開催予定の国際博覧会、いわゆる大阪・関西万博の開幕まで1000日となり、記念式典が開催されました[1]。

国内外の政治的、社会的、あるいは経済的な状況が混沌とする中で、日本国内で大阪・関西万博に向けられる関心の度合いは高くなく、2025年に万博が開催されることさえ周知されていないというのが実情と言えるでしょう。

それだけに「開催1000日前」を期して公式キャラクターの愛称を発表したり、記念の行事を行うことは、注目度の低い万博の存在感を少しでも高めようとする関係者の苦心の取り組みの一環でもあります。

それとともに、開催まで1000日という時期で国内の関心が高まらないとしても、当初は興味を引かず、開催の是非について最後まで一致した意見を見なかった2021年に実施された東京オリンピックが、開幕後には一定の支持を集めたことを考えれば、悲観すべき事態ではないかも知れません。

すなわち、現在の無関心がいつまでも続くわけではなく、しかるべき時期が来れば人々の注目の度合いも高まると考えることが可能でしょう。

一方で、東京オリンピックが掲げられた理念が不明瞭であったために周囲の状況の変化に伴って次々と新しい標語が掲げられたことや、事前の推計が杜撰であったために施設の建設費や運営費が膨張したことなどは、招致という目的のためには手段を選ばず活動する代償の大きさを物語ります。

同様に、なぜ2025年に万博を開催しなければならないのかという基本的な問いに対する明確な答えが示されないまま招致され、開催に向けて種々の開発などが進む状況からは、今後開催の正当性や是非を巡り紆余曲折を経ることが推察されるところです。

従って、大阪・関西万博の開催に関係する人たちには、「無関心なのは今だけ、始まればみんなやって来る」といった安易な考えを排し、「なぜ、2025年に万博を大阪で開く必要があるのか」「万博は何を目的とするのか」という事項を繰り返し明瞭に示し続ける必要があります。

基本的な事柄であるからこそ、内容への理解と共感を得るための努力を怠ってはならないのです。

[1]「あと1000日」万博PR. 日本経済新聞, 2022年7月19日朝刊22面.

<Executive Summary>
What Is a Problem of the Expo 2025 Osaka Kansai to Promote Its Presence? (Yusuke Suzumura)

The Japan Association for the 2025 World Exposition announces a nickname of the official mascot on 18th July 2022. In this occasion we examine a problem of the EXPO 2025 to promote its presence to the people of Japan.

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