加減乗除から考える第2次岸田第2次改造内閣における「副大臣と政務官に女性の起用なし」の問題点

去る9月15日(金)、政府は副大臣および政務官の人事を閣議決定し、54名の副大臣および政務官のうち、女性の起用はなく、全員が男性となりました。

昨年8月の内閣改造の際には11名の女性が副大臣もしくは政務官に任命されただけに[1]、史上最多に並ぶ5名の女性を入閣させた閣僚人事と対照的な人事となりました。

衆議院においては自民党及び無所属の会に261人中21人、公明党に32人中4人、参議院では自民党及び国民の声に111人中17人、公明党に28人中5人の女性議員が属しています。

大臣のみを対象とすれば、衆参両院において自公両党の会派に属する国会議員の総数に占める女性の割合(約10.8%)に比べ、全閣僚に占める女性の割合は約23.8%と高値を示しています。

しかし、副大臣及び政務官まで含めればその割合は約6.6%となり、衆議院における自民党及び無所属の会に所属する国会議員に占める女性の割合(約8.0%)をも下回ることになります。

もとより、大臣だけでなく、副大臣や政務官も国政の一翼を担いますから、女性であるからという理由のみでこれらの職に起用することは、一見すると国政における女性の活躍を推進するように見えて、かえって円滑な実務の遂行に支障をきたすことがあるかも知れません。

その点で、「どの閣僚にどういった副大臣をつけるのが適切なのか、チームとして人選を行った」という岸田文雄首相の発言[1]にも一定の合理性があると言えるでしょう。

一方で、人選に際してどのような基準が用いられたかが明示されていない以上、「チームとして人選を行った」ということを証明することは出来ませんし、実際に選ばれた人たちが副大臣や政務官としての適性を有するかも不明です。

昨年8月の第2次岸田改造内閣の際に女性の大臣が2人であったことから、このときは大臣から政務官までを合計して75人中13人が女性でありその割合が約20.9%となりました。

このことから、今回は大臣に5人の女性を起用したことで閣僚に占める女性の割合が約23.8%になったのだから、見かけの上では前回よりも女性の割合が増えていると考え、副大臣と政務官の女性の任命を見送ったか、与党の議員にとって顕職と思われがちな大臣の地位に多くの女性を起用したのだから、その分それよりも有権者への訴求力が劣る副大臣や政務官に男性を任命することで、男女間の差を埋め合わせたと考えているであろうことが推測されます。

しかしながら、たとえどのような理由があるとしても副大臣と政務官に女性を全く起用しないことは、「チームとして人選を行った」のであればそのようなチームの質が問われますし、こうした理由が方便であるなら、情実に基づいて人選したと人々が顰蹙してもおかしくありません。

何より、大臣の数で過去最多に並ぶ5人の女性を起用したことで政権の進歩性を強調したにもかかわらず副大臣および政務官の人事によってその効用を無に帰したばかりか、あたかもこれ以上女性は起用しないと居直るかのような姿勢を示したのですから、今回の内閣改造全体の人事は成功を収めたとは言い難いものです。

この点に、岸田文雄首相が「人事が好き」というものの、その周辺に政権の長期的な展望に基づいて助言する存在を欠くことが示唆されているのです。

[1]政府 副大臣と政務官の人事を決定 女性の起用はなし. NHK NEWS, 2023年9月15日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230915/k10014196891000.html (2023年9月19日閲覧).

<Executive Summary>
What Is the Meaning of the Selection of the Deputy Ministers and the Parliamentary Secretaries for the Kishida Cabinet? (Yusuke Suzumura)

The 2nd Kishida Cabinet reshufulled the cabinet members again on 13th September and appointed Deputy Ministers and Parliamentary Secretaries on 15th September 2023. On this occasion, we examine the result of the Deputy Ministers and the Parliamentary Secretaries, since there are no females who were appointed to these positions.

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