「GoTo東京発着除外」が持つ意味は何か

昨日、赤羽一嘉国土交通大臣は7月22日(水)から実施を予定しているいわゆる「Go To トラベル」事業について、東京都を目的とする旅行ないし東京都居住者の旅行を支援の対象から除外することを表明しました[1]。

これは、安倍晋三首相が「現下の感染状況を踏まえてそういう判断になった」[1]と指摘するように、東京都内で新型コロナウイルス感染者数が増加している状況を受けた措置です。

もちろん、「都民も税金を払っており不公平」[2]という指摘は、「Go To トラベル」事業の原資が税金であることを考えれば、当然です。

あるいは、都内での感染者数の変化は検査の件数の増加によることが示唆されているとはいえ、所期の事業をそのままの形式で行うことにも議論の余地があったことも事実です[3]。

その一方で、「Go To トラベル」事業は観光業やサービス業が新型コロナウイルス感染症の拡大によって需要と供給の両面で停滞ないし規模の縮小を余儀なくされる中で、さらなる打撃を受けることを回避するための施策です。

「Go To トラベル」以外にも飲食業や興行界も事業の対象となっていることは、「雇用の維持と事業の継続を最優先に取り組む」という趣旨[4]を具体化した結果でもあります。

しかし、「トラベル」を含むいわゆる「Go Toイベント事業」の眼目が需要の喚起による供給力の各尾にあるという点が人々に適切に伝わっているかと問われれば、答えは必ずしも積極的なものとはなりません。

むしろ、委託費を巡る「中抜き問題」[5]などが注目され、事業そのものの意義を政府が積極的に説明し、報道機関も是非を含めて報じる姿勢に乏しいというのが実情です。

その意味において、「Go To トラベル」を巡る対応の混乱は、当局者に、政策の目的と効果について体系的で詳細に伝えるだけでなく、聞き手が意義を直観的に理解できる内容をも用意する必要があることを示唆すると言えるでしょう。

もし、こうした適切な対処法を準備しなければ、たとえどれほど優れた政策であっても人々の理解と支持を得ることは容易ではなくなるのです。

[1]Go To 東京発着除外. 日本経済新聞, 2020年7月17日朝刊1面.
[2]都民「税負担、不公平だ」 観光地「感染拡大は怖い」. 日本経済新聞, 2020年7月17日朝刊3面.
[3]GoTO「国交省が判断」. 日本経済新聞, 2020年7月16日朝刊4面.
[4]【情報更新】令和2年度「需要喚起キャンペーン事業(Go Toイベント事業)」に係る委託先の募集(企画競争)について. 経済産業省, 2020年7月1日, https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2020/k200701001.html (2020年7月17日閲覧).
[5]野党、委託費問題で攻勢. 読売新聞, 2020年6月8日朝刊4面.

<Executive Summary>
What Is a Meaning of a Confusion on the "Go To Travel" Campaign? (Yusuke Suzumura)

Mr. Kazuyoshi Akaba, Minister of Land, Infrastructure, Transport and Tourism, says that a travel going to or coming from Tokyo will be ejected from the "Go To Travel" campaign starting from 22nd July 2020. It implies that it might be very important to the authorities to communicate with the citizens deeply, since a good policy is not always accepted correctly.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?