九州交響楽団東京公演

本日、15時よりサントリーホールにおいて九州交響楽団の東京公演が開催されました。

演奏曲目は前半がベートーヴェンの交響曲第2番、後半がリヒャルト・シュトラウスの交響詩『英雄の生涯』でした。指揮は小泉和裕でした。

今回の東京公演は1953年に創設された楽団の70周年記念演奏会の掉尾を飾るもので、東京公演は2004年2月22日の創立50周年記念以来20年ぶりとなりました。

私が九州交響楽団を初めて会場で聞いたのは2004年の東京公演で、この時は大山平一郎の指揮と園田高弘のピアノ独奏により、ウェーバーの序曲『精霊の王』、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番、そしてブラームスの交響曲第1番が演奏されました。

この公演の印象は在京の楽団の中に位置づけるなら中堅というもので、今後の一層の飛躍が期待されたものでした。

一方、今回の公演は、ベートーヴェンが作り上げようとした、優美さと力強い構成の融合という挑戦的な交響曲が持つ特徴を的確に踏まえ、軽やかな微笑みを絶やすことなく、しかも各楽器がそれぞれの勘所を的確に押さえた仕上がりとなりました。

例えば、第1楽章冒頭の木管楽器の明晰な演奏などは、この作品に対する指揮者と演奏者の理解に迷いのないことをよく示すものでした。

また、後半のリヒャルト・シュトラウスは第1部「英雄」の低弦とホルンの演奏で聞き手の注意を惹き付けることに成功した演奏でした。

リヒャルト・シュトラウスらしい輝度の高い旋律の数々を丁寧に解きほぐして一つの演奏に仕立て上げるのは、一人ひとりの奏者の粒が立っているからこそ可能なことです。

その結果、オルガンの音色に比すべき澄み渡る重厚さを基調としつつ時に軽快に、時に陰鬱とした表情の豊かな『英雄の生涯』の演奏が作り出されました。

今月をもって九州交響楽団の音楽監督を退任する小泉和裕にとっても集大成と呼ぶにふさわしい公演となったのが今回の東京公演です。

特に、『英雄の生涯』の演奏後にステージマネージャーが小泉に贈呈する花束をコンサートマスターの扇谷泰朋に滑り込むように手渡したり、終演後に客席の拍手に応えて小泉が再び舞台に登場したりしたのは、それだけ指揮者と楽団の結び付きが強いものであることを現していました。

このように、九州響にとって20年ぶりとなった東京公演は、楽団の力量の充実ぶりとともに、大いなる発展の軌跡を描き出すものでもありました。

それだけに、財政上の問題もあろうものの、定期的に東京公演が開催され、その高い実力がより広く多くの聞き手に披露されることが期待されるところです。

<Executive Summary>
The Kyushu Symphony Orchestra Concert in Tokyo (Yusuke Suzumura)

The Kyushu Symphony Orchestra held the Concert in Tokyo at the Suntory Hall on 20th March 2024. In this time, they performed Beethoven's 2nd Symphony and Richart Strauss' A Hero's Life. Conductor was Kazuhiro Koizumi.

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