岸田翔太郎首相秘書官の辞任はいかなる意味を持つか

昨日、岸田文雄首相が記者会見を行い、昨年末に首相公邸内で忘年会を開き、親族と記念撮影をするなど不適切な行動があったとして、岸田翔太郎首相秘書官が6月1日(木)付けで辞任することを明らかにしました[1]。

大臣が、将来の政界への進出を見据えて自分の子どもや親族を秘書官とすることは珍しくありません。そのため、岸田首相が長男である岸田翔太郎氏を秘書官としたことは、いずれ自らの地盤を引き継がせることに備えた、実績作りとしては政界の通例に則る対応に他なりません。

ただ、これまで種々の大臣の秘書官を務めた子弟の中で不適切な行動を理由に辞任した例は多くないだけに、任命権者としてだけでなく管理者としての岸田首相の責任は決して小さくないと言えるでしょう。

それとともに、本来であれば大臣を支え、大臣がより円滑に職務に専念できるよう努めることが本務である秘書官が、自らの言動によって大臣が良好な環境で執務することを妨げたり、大臣の評価を貶めるということは、秘書官の本分にもとることになりかねません。

もちろん、自らの子どもをはじめ親族を秘書官に起用することは、意思の疎通をより円滑なものとし、執務に専念するために一定の意義を持つと考えられます。

しかし、多くの場合、その名前が取りざたされることのない秘書官が、政治活動ではない話題で人々の注目を集めることは好ましいことではありません。

その意味で、今回の岸田秘書官の辞任は、改めて人事の難しさを教えるとともに、とりわけ自らの親族を起用する場合の問題点を改めて示したと言えるでしょう。

[1]首相、長男の秘書官更迭. 日本経済新聞, 2023年5月30日朝刊1面.

<Executive Summary>
What Is the Meaning of the Dismissal of Prime Minister's Secretary Shotaro Kishida? (Yusuke Suzumura)

Yesterday, Prime Minister Fumio Kishida announces that Prime Minister's Secretary Shotaro Kishida, his first son, will be dismissled on 1st June 2023. On this occasion, we examine the meaning of this measure based on the role of secretary for the Prime Minister.

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