「マー君の楽天復帰」で田中将大選手が踏み出した新しい道への第一歩

昨日、プロ野球東北楽天ゴールデンイーグルスは、大リーグのニューヨーク・ヤンキースからフリー・エージェントとなっていた田中将大選手との間で入団に基本合意したことを公表しました[1]。契約期間は2年で、推定年俸は9億円と出来高払いとなります[2]。

大リーグで主力として活躍していた投手が日本球界に復帰するのは、2014年12月に広島東洋カープと契約した黒田博樹選手以来7年ぶりとなります。

現在の大リーグは日本に比べて経営者の交代が頻繁であるとともに、球団を買収した際の金額に比べて売却時の金額が上昇することを見込んでおり、一面においては設備投資などを積極的に行うことで球団の資産価値を高め、他面においては売却後は新しい経営陣に契約を引き継がせることを前提に、選手との高額な年俸を結ぶことを可能にしています。

しかし、現在ヤンキースは選手年俸の総額が規定額を超える球団に課されるいわゆる贅沢税を回避することを基本的な方針としています。

そのため、球界屈指の資金力を持つヤンキースも、2020年の年俸が2300万ドルであった田中選手と再契約することは球団の政策として難しいという事情がありました。

さらに、大リーグが米国の蹴る新型コロナウイルス感染症の感性の拡大を受けて2020年の公式戦の試合数を162から60に削減するとともに無観客としたために、各球団の収入が減少したこと、さらに2021年も従来のような有観客による162試合制での実施が難しく、引き続き収入の減少が予想されることも見逃せません。

ヤンキースでの7年間で6年連続で二桁勝利を挙げた安定感と、通算78勝46敗、防御率3.74という実績は、田中選手が大リーグのどの球団でも先発2番手以上の実力を備えていることを示します。

その一方で、既存の契約が高額であったため、昨年でヤンキースとの7年間の契約が終了した田中選手に興味を持つ球団はあっても、条件面で合意を得ることは容易ではありませんでした。

結果として、今回、田中選手はヤンキースに入団する前に所属していたゴールデンイーグルスと契約を結び、大リーグ時代の約36%の水準ながら日本球界で最高の年俸を手にすることになります。

これまでにも、1987年のボブ・ホーナー選手のように、フリー・エージェントになったものの高額な年俸のために再契約先が見つからず日本の球団と契約し、顕著な成績を残して大リーグに復帰した事例があります。

田中選手が契約期間である2年のうちに優れた成績を示し、ゴールデンイーグルスとの契約を延長することもあるでしょうし、再び大リーグの球団と契約を結ぶ可能性も低くありません。

それだけに、これからの田中選手については、日本球界から大リーグに移籍した選手が日本に戻り、再び大リーグに復帰するという新しい経路をたどるのか否かという点が、注目されるところです。

[1]田中 将大選手 入団基本合意に関して. 東北楽天ゴールデンイーグルス, 2021年1月28日, https://www.rakuteneagles.jp/news/detail/00003518.html (2021年1月29日閲覧).
[2]田中、楽天に復帰. 日本経済新聞, 2021年1月29日朝刊37面.

<Executive Summary>
What Is a Future of Mr. Masahiro Tanaka? (Yusuke Suzumura)

Mr. Masahiro Tanaka, a pitcher of the New York Yankees, concluded a contract with the Tohoku Rakuten Golden Eagles on 28th January 2021. It might be a fascinating case for both Japanese and US professional baseball, since Mr. Tanaka would be the first Japanese player who comes back from the Major League Baseball to the Japanese Professional Baseball and again to join the MLB.

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