酸素ステーションの設置とともに求められる措置は何か

東京都は新型コロナウイルス感染症の感染の拡大を受け、旧国立総合児童センター「こどもの城」に約130人に酸素投与などを行える酸素ステーションを開設するほか、合計3か所で400人程度を受け入れる体制の整備を急ぐことを公表しました[1]。

報道では、新設される酸素ステーションでは、自宅療養中に救急搬送を要請した感染者のうち症状が比較的軽いと救急隊が判断した人を中心に受け入れ、24時間態勢で血中酸素濃度を測定しながら酸素投与を実施し、容体が回復すれば自宅などに戻るとともに、医師らが必要と判断した場合は入院措置が講じられるとのことです[1]。

確かに、小池百合子都知事が「まさに災害時と言うべき状況」[1]と発言するように、東京都における新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中で、あらゆる施策が講じられることは重要です。

その一方で、酸素ステーションは療養者が酸素を吸引する場所ではあるものの、症状の重症化を防ぐ場所ではありません。

しかも、療養者が帰宅するのは容体の回復を前提としているのですから、状態が好転しなければ入院せざるを得ません。

このとき、新型コロナ感染症の罹患者を受け入れられる医療機関の数が限界を迎えつつある現状では、入院先の見付からない人の数が増えることになります。

こうした状況を解消するためには既存の医療機関の「コロナ用病床」の増床を促進するか、臨時の医療施設の設置を進めることが現実的です。

「最近の搬送困難事例などを考えれば、3か所の大規模酸素ステーションが整備されることは評価できる。さらに多くのステーションを設けるとともに、症状が悪化した患者を搬送する入院先の確保も必要だ。」という松本哲哉氏(国際医療福祉大学)の指摘[1]もこうした状況への改善を求める提言に他なりません。

それだけに、東京都をはじめとして関係諸機関には、酸素ステーションの設置で満足することなく、さらなる対策を講じることが求められるのです。

[1]都が酸素ステーション. 読売新聞, 2021年8月18日朝刊38面.

<Executive Summary>
Setting Up Oxygen Station Is Only Just a Temporary Measure for the COVID-19 (Yusuke Suzumura)

It is reported that the Tokyo Metropolitan Government will set up Oxygen Station for the COVID-19 in the next week. In this occasion we have to emphasise that it is only a measure and they have to prepare other measures.

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