安孫子信先生の法政大学からの定年退職に際して思い出すいくつかのこと

来る3月31日(木)、法政大学文学部哲学科教授の安孫子信先生が定年退職されます。

すでに最終講義は3月5日(土)に「ベルクソンをめぐって」と題して行われていました[1]。

そこで、今回は安孫子先生にまつわるいくつかの出来事を振り返ります。

私が安孫子先生に初めて接したのは、大学1年生の際に1年次の必修科目である「基礎文献ゼミ」を受講したときでした。

白井健三郎の翻訳によるアランの『幸福論』(集英社、1993年)の講読を通して、1年間に文献の読解や報告の行い方、さらにはレジュメの作成まで、大学生に求められる基礎的な能力を養えたのは、私にとって重要な機会となりました。

また、大学3年生から始まる演習では、聴講という形で参加しつつ、2年間にわたりベルクソンの文献の講読を行うとともに、夏の合宿や年度末のご自宅への訪問など、正規の参加者と同様の活動を行いました。あるいは、他の演習の履修生ながら卒業論文報告会に参加して卒業論文の報告を行ったのも、今では愉快な思い出です。

さらに、大学3年生の春休みの際には、翌年度から始まるサブゼミに誘っていただくとともに、「大学院に進学するならドイツ語だけでなく、フランス語も修得しておくとよい」と助言して下さったことを受け、春休み中にフランス語を学習できたのは、その後の研究活動に大きく役立つこととなりました。

ところで、私が2002年3月に法政大学大学院人文科学研究科哲学専攻修士課程を修了し、その後の1年間を研究生として過ごした際、2003年度から法政大学大学院に国際日本学インスティテュートが新設されることを紹介して下さったのが、安孫子先生でした。

専攻を哲学から政治学に変更し、法政大学大学院国際日本学インスティテュート社会科学研究科政治学専攻修士課程の1期生となってからの歩みは、今年2月に刊行した私の著書『清沢満之における宗教哲学と社会』(法政大学出版局、2022年)の「あとがき」に記したとおりです[2]。

これに加え、2010年10月31日(日)から11月2日(火)までアルザス欧州日本学研究所で開催された法政大学国際日本学研究所(HIJAS)による「アルザスシンポ2010」に、当時のHIJAS所長として私に参加の機会を与えてくださたったのも安孫子先生でした。「アルザスシンポ2010」への参加を契機として特に欧州の日本学関係の研究者の多くと交流するようになったのは、私にとって重要な経験となりました。

現在、私が国際日本学関連の教育プログラムの運営や留学生の指導に携われるのも、上記のような安孫子先生の助言や配慮に多くを負っています。

こうしたことからも、初めてお会いしてから26年になろうとする現在に至るまで折に触れ親しく指導され安孫子信先生の公私にわたるご厚情に改めて御礼申し上げる次第です。

[1]2021年度最終講義のお知らせ. 2021年12月21日, https://www.hosei.ac.jp/info/article-20211220161105/ (2022年3月29日閲覧).

[2]鈴村裕輔, 清沢満之における宗教哲学と社会. 法政大学出版局, 2022年, 216-218頁.

<Executive Summary>

Miscellaneous Impressions of the Retirement of Professor Shin Abiko (Yusuke Suzumura)

Professor Shin Abiko will retire from Hosei University on 31st March 2022. In this occasion I express miscellaneous of Professor Abiko.

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