「衆参3選挙の『全敗』」は菅義偉首相にいかなる影響を与えるか

昨日投開票が行われた参院広島再選挙、参院長野補選、衆院北海道2区補選では、自民党が候補者を擁立しなかった衆議院北海道2区の補欠選挙を含め、すべての選挙で野党側が勝利を収めました。

菅政権が発足してから最初の国政選挙となった今回の3件の選挙で与党が全敗したことは、政権へのある種の批判を示しており、今後の政権運営に影響を及ぼすことが推察されます[1]。

その一方で、自民党内でにわかに「菅おろし」の声が強まると考えるのは早計です。

もちろん、菅内閣への支持率が森喜朗内閣の末期のように10%台となれば、自民党内で「菅おろし」の声が起こることでしょう[2]。

特に内閣支持率の高い安倍晋三政権下で初当選し、選挙区での基盤の弱い議員が多い若手議員は「菅さんでは戦えない」と世論の人気の高い他の候補を新総裁として擁立することを目指さざるを得ません。

しかし、現時点で菅首相に代わって政権を担う意欲を持つ人物はいるとして、知名度はあっても人気に欠けるか人気はあっても能力に疑問符が付くというように、現職の総裁を打倒できるだけの広範な支持を得る人物は見当たらないのが実情です。

また、一時は安倍前首相の好敵手であった石破茂元幹事長も、現在では自派の所属議員の数が総裁選挙の立候補に必要な推薦人20名を下回っており、総裁選の最前線に立っているとは言い難いところがあります。

このように考えれば、「菅おろし」の声が高まれば、菅義偉首相は自らの後継問題が本格的に取り沙汰される前に衆議院を解散し、党内が否が応でも「菅総裁」の下で結束せざるを得ない状況を作り出すことでしょう。

そして、実際に総裁選前に総選挙が行われた場合、現有議席を維持できないとしても自民党の単独過半数を確保すれば、今年9月の総裁選でも菅首相の再選となる可能性が高まります。

もちろん、政権による新型コロナウイルス感染症対策が効果を上げない場合などは支持率が一層低下することも考えられます。

それでも、少なくとも今回の3件の国政選挙の結果が、菅首相の進退にただちに大きな影響を与えることはないでしょう。

[1]衆参3選挙 自民「全敗」. 日本経済新聞, 2021年4月26日朝刊1面.
[2]鈴村裕輔, 「総裁選前解散」は菅義偉首相にとって好ましい戦略か. 2021年4月9日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/2738cc6881dc07627c9a5b2969570077?frame_id=435622 (2021年4月26日閲覧).

<Executive Summary>
What Is a Meaning of the Results of Three Elections for Prime Minister Yoshihide Suga? (Yusuke Suzumura)

Three National Elections including an Upper House vote in Hiroshima were conducted on 25th April 2021 and the administrative parties could not obtain any seat. It seems remarkable damage for Prime Minister Yoshihide Suga, however we have to examine the possibility of "Recall of Mr. Suga".

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