再選を果たしたマクロン氏を待ち受ける課題は何か

4月24日(日)にフランスで大統領選挙の決選投票が行われ、現職のエマニュエル・マクロン候補が国民連合のマリヌ・ルペン候補を破り、再選されました。得票率はマクロン候補が58.5%、ルペン候補が41.5%でした[1]。

EUやNATOを基軸とする国際協調を重視するマクロン候補が当選したことで、現在の国際社会の最大の懸案事項であるロシアによるウクライナへの侵攻の問題については、各国の結束が維持されることになります。

特にNATOについては、ルペン候補が当選した場合は、独自の外交政策を標榜したドゴール政権下の1966年に軍事部門から離脱し、2009年に復帰するまで43年にわたり政治部門のみに参加したように[2]、国際協調よりもフランスの利益を最優先する可能性も推察されました。

それだけに、今回のマクロン氏の勝利は国際社会にとって重要な意味を持ちます。

一方、前回と同じ顔ぶれによる決選投票となったものの、両者の得票率の差が2017年に比べて半分近くになったこと[3]や、棄権者の割合が過去50年間で最も高くなったことなどは、2期目のマクロン政権の基盤が盤石でないことを予想させます。

実際、第1回目の投票後に有権者、特に左派を支持する層を取り込むために政策の追加や変更を頻繁に行ったことは、一面において決選投票での勝利をもたらし、他面では今後の政権運営の中で本来の富裕層優先ととられる政策を遂行すれば、政権の安定が難しくなり、国内の分断も深まることになりかねません。

何より、従来の主張を抑制して物価対策を強調したことでルペン氏への支持が拡大したことは見逃せません。

すなわち、フランスはもとより世界中で広がる物価高を巡り、世界中でポピュリズム的な物価対策が支持を集め、結果的に極端な主張を行う政党や候補者の勢力が拡大する可能性があるからです。

その意味で、マクロン氏は2002年のジャック・シラク氏以来20年ぶりに再選した現職となったとはいえ、今後の政権運営はこれまで以上に厳しくなると言えるでしょう。

[1]Les résultats en direct. Ministère de l'Intérieur, 26th April 2022, https://www.elections.interieur.gouv.fr/resultats/resultats-en-direct (accessed on 26th April 2022).
[2]山本健太郎, フランスのNATO統合軍事機構復帰を巡る一考察. 国際安全保障, 第40巻第4号, 2013年, 86-103頁.
[3]マクロン仏大統領再選. 日本経済新聞, 2022年4月26日朝刊1面.

<Executive Summary>
President Macron Has to Overcome Difficulties after Victory of the Presidential Election (Yusuke Suzumura)

The Final Presidential Election of France was held on 24th April and President Emmanuel Macron defeated National Rally Leader Marine Le Pen. In this occasion we examine a meaning of reelection of President Macron and his governance in the 2nd term as the French President.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?