「デジタル庁の発足」で求められる「第二次中央省庁再編」の断行
本日、デジタル庁が発足し、平井卓也国務大臣がデジタル大臣に就任しました。
諸機構を横断し、真に利用者本位で利便性の高い役務を提供することは、「経済・社会全体にデジタルトランスフォーメーション(DX)を波及させる最後のチャンス」ともされます[1]。
それだけに、約600人の構成員のうち200人が民間出身に対して「役所の流儀を覆すこと」[1]が期待されるのも無理からぬところです。
その一方で、情報技術の実務に詳しい者が情報技術行政に通暁しているとは限らず、行政機構や法制度のあり方に明るくなければどれほど登用した「民間出身者」の力量が高いとしても、優れた案を実際の施策に反映させることは容易ではありません。
また、民間からの人材の招聘は一時的にデジタル庁をはじめとする政府機関の情報通信行政の質的な向上をもたらすかもしれないものの、同時に情報技術行政に長けた官僚の層を厚くすることも不可欠です。そのためにも、人材の育成もより積極的に行われなければならないと言えるでしょう[2]。
何より、デジタル庁が大臣庁となったことで行政機構の肥大化が一層進んだ点は見逃せません。
ひとたび設置された省庁の統廃合が困難を極めることは2001年の省庁再編問題の過程を見るだけで明らかです。
実際、デジタル庁の設置には意欲的であった菅義偉首相が行政機構の再編や行政改革に積極的な姿勢を示していないことは、「規制改革」や「縦割り行政の打破」を掲げた菅首相[3]の意欲が疑われかねません。
それだけに、菅首相には今後再度の中央省庁再編に取り組むだけの気概を示し、実践することが求められるのです。
もしそうでなければ、新たな利権官庁が誕生し、「デジタル行政」は新たな既得権とならざるを得ないでしょう。
新たに誕生したデジタル庁だからこそ、われわれはその行方を中止するのです。
[1]デジタル庁きょう発足. 日本経済新聞, 2021年9月1日朝刊1面.
[2]鈴村裕輔, 菅首相は「デジタル庁新設問題」を契機に「第二次中央省庁再編」を断行できるか. 2020年9月18日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/04e6d915b2f97b9fa4e34af272c71b96?page_id=2804 (2021年9月1日閲覧).
[3]規制改革へ縦割り打破. 日本経済新聞, 2020年9月17日朝刊1面.
<Executive Summary>
Will the Digital Agency Be the First Step for an Administrative Reform? (Yusuke Suzumura)
Today the Digital Agency Japan (DAJ), a new agency for digital transformation, is launched. In this occasion we examine a possibility of an administrative reform after starting the DAJ.
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