「次元の異なる少子化対策」に対してわれわれは何を注意すべきか

昨日、岸田文雄首相はこども政策の強化に関する関係府省会議に初めて出席し、少子化を食い止め、出生数の増加を実現するための意欲を示しました[1]。

今年1月の施政方針演説の中で「年齢・性別を問わず、皆が参加する、従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい」[2]と指摘したように、少子化対策は岸田首相にとって政権の重要な課題です。

そして、岸田首相の「次元の異なる少子化対策」という一言により、関係各府省庁だけでなく与野党が競うように少子化対策を提案しています。

例えば、昨日も立憲民主党と日本維新の会が児童手当の所得制限の撤廃や高等学校の授業料無償化などを含む児童手当法改正案を衆議院に共同提出しました[3]。

育児にかかる費用は所得のいかんにかかわらないものであること、あるいは高額の納税者こそ対価として公費による負担を受けてしかるべきであると考えるなら、児童手当の所得制限の撤廃は妥当な措置となります。

また、中学卒業後は高等学校に進学することが当然ともいうべき現在の状況に鑑みれば、公私間の授業料の違いの問題はあるとはいえ、実質的な義務教育として高等学校の授業料を無償化することにも、一定の意義があるでしょう。

一方、政治家は短期的には選挙での勝利を最優先するため、有権者の反感を招きかねない国民の負担が大きくなる施策を避け、政府や自治体による支出を増やそうとしがちです。

それだけに、各党が様々な政策を提案することは重要ながら、それらの取り組みが具体的にどのような効果を持ち、日本の将来にいかなる影響を与えるかを精査する視点が重要となります。

「次元の異なる少子化対策」がどのように実現されるのか、また各種の対策が「次元の異なる」施策ではなく「低次元の」施策となることはないか、われわれ有権者の一人ひとりが今後の推移を注意することが求められるのです。

[1]首相「少子化、反転させる」. 日本経済新聞, 2023年2月21日朝刊4面.
[2]第二百十一回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説. 首相官邸, 2023年1月23日, https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2023/0123shiseihoshin.html [2023年2月21日閲覧].
[3]立民・維新が改正案提出. 日本経済新聞, 2023年2月21日朝刊4面.

<Executive Summary>
What Is an Important Attitude for Us to Examine the Countermeasures against the Low Birthrate? (Yusuke Suzumura)

After Prime Minister Fumio Kishida's policy speech, the countermeasures against the low birthrate is one of the most important political issues of the both Administrative and Opposition Parties. On this occasion, we examine an important viewpoint to examine their attitude for the measures.

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