支持率低下に直面する岸田文雄首相に勧める「海部流」の政権運営

各種世論調査で岸田文雄内閣への支持率が低下しています。

本日公表された日本経済新聞とテレビ東京による世論調査でも、昨年10月の政権発足以来初めて不支持が支持を上回るなど[1]、これまで堅調に維持してきた支持率の低下が進んでいます。

岸田内閣への支持が低下している主な理由は、今年7月8日の安倍晋三元首相の急逝後に明らかになった政界における世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係の深さにまつわるいわゆる「旧統一教会問題」で、政府や与党自民党の対応が不十分であるという批判が世論調査の結果に示された形です。

与野党を問わず多くの国会議員が関わる「旧統一教会問題」は、国民の政治への信頼を損ねる問題でもあります。

日本の政界は、これまで大小様々な疑獄や汚職事件などを経験しました。その中でも国民の政治不信が大きく高まった事例の一つとして挙げられるのが1988年のリクルート事件です。

与野党を問わず多くの国会議員が関わっただけでなく、地方自治体の首長や議員から政財界に至るまで各界に波及した問題は、自民党の長期政権に対する国民の不満を高めるとともに、政界の廓清を求める声も高まりました。

こうした中で首班となった海部俊樹氏は政治改革を掲げ、自らの清新な印象とともに政権の支持率は終始高いままでした。

最後は政治改革関連法案が審議未了廃案となったことを受けて「重大な決意で臨む」と発言したことが衆議院の解散を意味すると受け取られたものの、党内の支持を得られなかったため解散できず、最終的には退陣を余儀なくされました。

しかし、政治不信に際して明確な政策の目標を示すことで国民の支持を得るという点では、海部内閣は重要な教訓を後の首相たちに示しました。

森喜朗内閣に対する国民の不信感の高まりを受けて政権を担当し、就任以来一貫して郵政民営化を唱え、最後は党内の反対派を一掃する形で実現にこぎつけた小泉純一郎内閣などは、こうした海部流の政権運営をより徹底して行った事例と言えるでしょう。

それだけに、急速に広まる政治不信を克服するために、岸田文雄首相には「新しい資本主義」といった漠然とした考えではなく、明確な政治改革の方針を標榜することが、低落する支持率の回復には不可欠となるのです。

[1]岸田内閣支持最低43%. 日本経済新聞, 2022年9月19日朝刊1面.

<Executive Summary>
What Is an Important Policy for Prime Minister Fumio Kishida to Overcome a Decline in Public Approval Ratings? (Yusuke Suzumura)

A public approval ratings for the Fumio Kishida Cabinet is declining after occurrence of the "Unification Church Issue". On this occasion we examine a way for the cabinet to overcome this situation based on distrust in politics.


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