頭の体操として考える「トランプ支持派の連邦議会議事堂への乱入」とトランプ大統領の目的

昨日、米国では連邦上下両院合同会議が行われ、昨年11月に行われた大統領選挙の結果の認定作業が行われた際、ドナルド・トランプ大統領の支持派が連邦議会議事堂に侵入しました[1]。

院外の勢力が物理的な力を加えて議員たちの行動に制約を加えようとしたことは議会政治に対する挑戦です。それだけに、今回のような実力の行使が不首尾に終わったことは、米国の議会政治のためにも大いに喜ばしいことと言えるでしょう。

また、支持者を煽動するような言動で今回の事態を招いたのは他ならぬトランプ大統領であっただけに、任期の満了を目前に最後を飾ることが出来なかったと考えることが出来ます。

一方、頭の体操としてトランプ大統領自身の視点から今回の出来事を眺めれば、どうなるでしょうか。

支持者が議事堂に侵入すれば議員たちが翻心してバイデン前副大統領の当選を取り消し、自身を当選者とすると考えていたのであれば、トランプ氏は政権党と在野党が互いに政策を競い合い、討議と対話を経て結論に至るという議会政治の本義を最後まで理解できなかったことになります。

しかし、トランプ大統領がより狡猾であると仮定するなら、今回の騒動には別な目的があったことになります。

すなわち、自らの動員力と、「トランプ支持者はトランプの言うことしか聞かない」という統制力の強さを示すことが、トランプ氏の目的であったと推察されます。

大統領選挙で敗北しても共和党内での影響力を維持するためには、政権を支えたトランプ支持者がどれほど自らの意のままに動くかを示すことは、有効な手立ての一つとなるでしょう。特に議事堂に侵入した一団は、「トランプ後」の共和党執行部には目に見える形での圧力となります。

こうして存在感を誇示することが今回の主眼であると考えれば、トランプ大統領が議会の決定を拒否せず、ジョー・バイデン前副大統領を次期大統領として受け入れる旨を表明したこと[2]も合点が行きます。

いずれにせよ、こうした見立てが成り立つというほどには、トランプ大統領は異例の存在であったと言えるところです。

[1]Woman dies after shooting in U.S. Capitol; D.C. National Guard activated after mob breaches building. The Washington Post, 7th January 2021, https://www.washingtonpost.com/dc-md-va/2021/01/06/dc-protests-trump-rally-live-updates/ (accessed on 8th January 2021).
[2]Trump finally concedes Biden will become president. CNBC, 7th January 2021, https://www.cnbc.com/2021/01/07/trump-for-first-time-acknowledges-new-administration-will-take-office-jan-20.html (accessed on 8th January 2021).

<Executive Summary>
What Is a Meaning of U.S. Capitol Invasion for President Donald Trump? (Yusuke Suzumura)


There was a serious conflict by a mass invasion to U.S. Capitol to interrupt electoral vote on 6th January 2021. It this occasion we examine a meaning of the invasion for President Donald Trump.


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