「緊急事態宣言の発令」を受けて行われるべきことは何か

昨日、新型インフルエンザ等対策特別措置法に定められた用件が満たされたとして、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県の7都府県を対象に、緊急事態宣言が発令されました[1]。発令の期間は5月6日(水、祝)までの1か月間です。

緊急事態宣言が発令されることそのものは、現在の日本国内の新型コロナウイルスの感染の拡大の状況に鑑みれば、適切な対応と言えるでしょう。

また、新型インフルエンザ特措法の制定後に初めて緊急事態宣言が発令されるだけに、法の定めに従い、手続きを進めた政府の対応は適切なものと言えます。

一方、緊急事態宣言によって対象地域で日常生活の一部に制約が生じるという点で都市機能の低下は生じるものの、都市の封鎖 などが行われないという点は、政府からも宣言の対象となる自治体からも、繰り返し強調される必要があります。

何故なら、一部では、欧米諸国のように「強制力を持ったロックダウンが行われる」という見方がなされているからです。すなわち、緊急事態宣言の発令に先立って一部の地域で日用品の必要以上の購入などが起きていることを考えれば、事実とは異なる意見が広まることで、宣言の発令後に必需物資の供給が逼迫することが予想されます。

このような状況の背景には、人々が、緊急事態宣言を罰金などの制裁を含む諸外国の措置や、日本の戦前における戒厳令と混同している可能性が推察されます。

あるいは、例えば憲法の改正問題や集団的自衛権の行使に関する法律の整備の問題などに関する安倍晋三首相や他の閣僚のこれまでの言動が、人々に対して緊急事態宣言の発令の持つ意味を誤って伝えている可能性も否めないところです。

実際、安倍晋三首相は昨日の衆議院の議院運営委員会において、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ「緊急時に国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えるか。憲法にどう位置付けるかは極めて重く大切な課題だ」と述べ、憲法改正による緊急事態条項の導入について国会の議論を促しています[2]。

こうした態度は、もし緊急事態宣言の発令後も新型コロナウイルスの感染者数が減少に転じなければ、より強制力を伴う立法措置を講ずる可能性を推察させるものです。

それだけに、緊急事態宣言が発令された後は、政府や各自治体には、内容のいかんにかかわらず、実証可能な情報を予断を排して適時適切に公表することで、今回の措置の妥当性と正当性を担保することが求められます。

そして、われわれにも、緊急時こそ政府や自治体などによるの「措置」や「要請」が法的根拠を伴ったものであるか、「全てお任せ」ではなく「任せた以上は最後まで目を離さない」という態度を失わないことが重要なのです。

[1]新型コロナウイルス感染症対策本部(第27回). 首相官邸, 2020年4月7日, https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202004/07corona.html (2020年4月8日).
[2]首相、改憲議論促す. 日本経済新聞, 2020年4月8日朝刊6面.

<Execuitve Summary>
What Shall We Respond to the Declaration of a State of Emergency for the COVID-19? (Yusuke Suzumura)


The Japanese Government declared a State of Emergency for the COVID-19 on 7th April 2020. On this occasion we have to pay our attention carefully to the activities of the Government, since the declaration does not guarantee them to be assigned with a plenary power of attorney.

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