「台湾有事」はなぜ日本にとって重要な問題となるのか

昨年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降、従来の国際秩序は転換期を迎えるとともに、台湾有事の可能性の高まりが指摘されています。

何故ウクライナ問題が台湾有事問題とかかわるかと言えば、昨年10月の党大会を経て3期目が発足した習近平政権の存在があります。

すなわち、文化大革命後に集団指導体制が確立して以来、中国では国家主席と党総書記の任期は2期10年までとする慣習が適用されてきました。

これは、文化大革命によって、特定の個人に権力が集中することの弊害を身をもって体験した中国に指導者たちの、統治上の知恵と言えます。

一方、習氏は異例の3期目を担当することになりました。

過去40年以上にわたる中国の国家統治のあり方を根本から改めた習氏には、政権の正当性の根拠を示す必要が求められることになります。

このとき、国際社会からの制裁を受け続けるとしてもロシアが武力によってウクライナを屈服させるなら、どうなるでしょうか。

習氏は経済的、政治的な制裁によって一時的には不利な状況に陥るとしても、当初の困難を耐え抜けば最終的には自国に有利な展開を手にできると考え、それだけに、「一つの中国」という国家の根本的な政策に基づき、武力行使も含めて台湾を併合し、政権の正当性を誇示しかねません。

そして、中国による台湾への武力侵攻などの台湾有事が発生した場合、台湾の住民が避難先の一つとして選ぶのが日本となります。

もし台湾有事が起きれば、日本には台湾からの避難民が退避したり、中台間の武力行使の余波が日本の領土・領海・領空内に及ぶ可能性があります。

ウクライナ問題が台湾有事に繋がりかねず、しかも台湾有事に備え、事前に国防上の十分な態勢を整えることが日本にとって重要な施策であるとされるのは、こうした事情によるのです。

基本的な事柄だけに、折に触れてこうした問題の所在を確認することの意味は、決して小さくないのです。

<Executive Summary>
Why Is the Taiwan Emergency Issue Important for Japan? (Yusuke Suzumura)

It is said that the Taiwan Emergency Issue is very important problem for Japan. On this occasion we examine a structure of the issue and its impact to Japan.


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