立憲民主党が「大きな固まり」であり続けるために解決すべき3つの問題

本日、立憲民主党、国民民主党及び無所属議員などが合流し、新たに立憲民主党が結成されました[1]。

衆参両院を合わせて150人が参加する立憲民主党は衆議院銀107人、参議院議員43人からなり、2016年に民進党に改称した旧民主党以来、初めて衆議院議員が100人を超える野党となりました[2]。

そこで、今回は立憲民主党が解決すべき3つの問題について検討します。

第1の問題は選挙対策です。

2021年10月に衆議院議員を任期満了を迎えることを考えれば、9月10日(木)に行われた代表選挙後に代表に選ばれた枝野幸男が「ここからが本当の戦いだ」と自民党への対抗心を示したように[3]、総選挙を見据えた態勢作りを整えることは立憲民主党の喫緊の課題です。

実際、9月16日(水)に首相に選出される予定の自由民主党の菅義偉総裁が「全体を見ながら判断したい」[4]と早期の解散総選挙の可能性を示唆していることから、新党は停滞している選挙区の調整を速やかに行う必要があります。

もし、選挙区の調整が出来なければ、新しい選挙区に配置される議員や候補者の氏名や政策などが各選挙区の有権者に浸透する前に解散総選挙となり、合流によって拡大した勢力が縮小しかねません[5]。

次に問題となるのは、立憲民主党としてどのような政策を掲げるのかという点です。

旧立憲民主党は「立憲主義」や「安倍改憲の反対」などを標榜してきました。

しかし、安倍晋三首相が退陣するために「安倍改憲の反対」は意味をなさくなりますし、菅総裁の「地縁も血縁もなく政治の世界に飛び込んだ自分が自民党総裁に就任することこそ民主国家日本の象徴である」という趣旨の発言[4]は、「立憲主義」という立憲民主党の理念を念頭に置いていることを推察させます。

しかも、安倍政権は社会保障の分野などで野党の主張を取り込んで具体的な政策として実施することが珍しくなく、菅総裁は不妊治療への保険適用に言及し[6]、旧立憲民主党が今年2月にまとめた不妊治療への保険適用の提言[7]の成果を相殺しようとしています。

いわば、野党の政策や提言を実効化することで争点をなくそうとするのが自民党の戦略であるとともに、政党としてのしたたかさを示しています。

それだけに、立憲民主党には新しく、しかも自民党との違いが明確であり相手が容易に取り込めない主張を行う必要があると言えるでしょう。

そして、大同を捨てて小異に就くという旧民主党以来の悪癖を脱し、たとえ議論の過程では種々の異論や反論があるとしても、最後は執行部の結論に従うという大局的な観点を持ちうるかが、第3の問題となります。

周知の通り、民主党は政権を獲得した後に消費増税を巡る路線の対立から党が分裂したために勢力を縮小させ、下野を余儀なくされましたし、後身である民進党は希望の党への合流を巡る問題によって立憲民主党と国民民主党に分かれることになりました。

一方、2009年に政権の座から降りた自民党は民主党政権下で離党者の数を最小限に抑えたことで集票力を維持することが出来ました。

すなわち、たとえ1票差であっても比較1位の候補者のみが当選する小選挙区制にあっては、党の分裂とそれに伴う党の規模の縮小化は集票力に直結するだけに、避けるべき行為となります[8]。

その意味で、立憲民主党は下野の際も党内の結束を維持して脱落者を最小限にとどめた谷垣禎一前自民党総裁の手腕[9]を見習う必要があり、党の分裂を繰り返した民主党の故事に倣うことは禁忌となります。

3つの点はいずれも容易に思いつくものではあるものの、実行することは決して簡単ではないかも知れません。

しかしながら、迫りくる問題に対処しない限り、自民党政権に対抗するための「大きな固まり」[10]はなすすべなく溶解するか、雲散霧消せざるを得ないのです。

[1]合流新党 立憲民主党 結党大会 150人の野党第1党が正式に発足. NHK NEWS WEB, 2020年9月15日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200915/k10012619081000.html (2020年9月15日閲覧).
[2]衆院選へ 継続優先. 日本経済新聞, 2020年9月15日朝刊4面.
[3]枝野氏 問われる手腕. 朝日新聞, 2020年9月11日朝刊3面.
[4]菅総裁 会見要旨. 日本経済新聞, 2020年9月15日朝刊4面.
[5]鈴村裕輔, 「立民と国民の合流」で重要な「選挙区の調整」は行われているか. 2020年8月12日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/8a2764e4a601c46b1897fa80c1050377?frame_id=435622 (2020年9月15日閲覧).
[6]菅氏「不妊治療に保険適用」. 読売新聞, 2020年9月10日朝刊1面.
[7]不妊治療支援 立民提言. 読売新聞, 2020年2月29日朝刊4面.
[8]鈴村裕輔, 総選挙が告げる第三極の黄昏. 2014年11月27日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/7fd852faff48ff3b745263fe2d832e5f?frame_id=435622 (2020年9月15日閲覧).
[9]鈴村裕輔, 鈴村裕輔, 総選挙における「自民党圧勝」の予測記事は何によって生まれたか. 2012年12月14日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/babe7a02d33156119e12bdc8c7f24db1?frame_id=435622 (2020年9月15日閲覧).
[10]新党「衆院で100人強」. 読売新聞, 2020年8月27日朝刊4面.

<Executive Summary>
Three Important Issues for the Constitutional Democratic Party of Japan (Yusuke Suzumura)

The new party the Constitutional Democratic Party of Japan consist of the CDPJ, the Democratic Party For the People and other independent diet members is formed on 15th September 2020. There are three important issues for the new party to solve and overcome to compete against the Liberal Democratic Party.

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