『クラシックの迷宮』の特集「夏のラジオ体操大会」が改めて示したラジオと音楽の関係
去る8月24日(土)に放送されたNHK FMの『クラシックの迷宮』の特集は「夏のラジオ体操大会」でした。
今回の趣旨は夏の風物詩でもあり、人々に広く親しまれるラジオ体操を手掛かりにラジオと体操、ラジオと音楽との関係を探るというものでした。
現行のラジオ体操の第一と第二だけでなく1928年に発表された初代のラジオ体操を紹介するのは順当ながら、国民体操とも称された初代のラジオ体操第三、さらに二代目の第一から第三までを取り上げるのは、司会の片山杜秀先生ならではの目の行き届いた取り組みでした。
また、1939年に武内俊子の作詞により「朝日を浴びて」と題されることになる『ラジオ体操の歌』を手掛けた福井直秋や1944年の『ラジオ縄跳』の深海善次など、総力戦体制の確立から太平洋戦争への突入から日本軍の劣勢へと至る時期にも、国民の体力向上や一体感のさらなる醸成のためにラジオが積極的に活用されるとともに、当時の著名な音楽家や有力な作曲家が深く関わっていることが示されたのは、ラジオにとっての音楽と音楽にとってのラジオのあり方を考える上で示唆に富むものでした。
一方、戦後はテレビの普及によってラジオが補助的な媒体となる中で、体力向上や一体感の醸成といった戦前や戦中の目的とは異なり、教育的な側面から音楽とメディアの関係が新たに築かれるようになったことを伝えるのが、今回の放送の後半の眼目でした。
例えば『パジャマでおじゃま』や『はみがきじょうずかな』はNHK教育テレビの『おかあさんといっしょ』を象徴する作品ですし、フジテレビの同様の番組である『ママとあそぼう!ピンポンパン』も『おかあさんといっしょ』をしのぐべく『ピンポンパン体操』を擁して子どもたちに親しまれたものでした。
さらに、『ドリフのピンポンパン』に至っては、子どもたちから高い支持を集めつつ、保護者が顰蹙したザ・ドリフターズが『ピンポンパン体操』を独自の発想で歌った作品として、その芸域の広さを今日に伝えるものでもあります。
こうした様々な作品を通して、媒体としてのラジオの社会的な位置付けの変化を踏まえつつ、同時に多くの聴取者たちに同様の内容を伝達できるというラジオの持つ特徴が人々に与えた影響を検討したのは、この番組ならではの試みでした。
そして、最後に取り上げたのが1999年に放送が始まったNHKの『みんなの体操』であり、この作品を通して聴覚だけでなく視覚にも訴えるテレビも基本的にはラジオと同じ役割を担っていることが明らかにしたところに、片山先生の慧眼ぶりがよく表れていました。
2025年は日本におけるラジオ放送の開始から100年の節目を迎えます。こうした重要な時期に、ラジオの持つ基本的な性格を改めて検討した今回の放送の意義は実に大きなものでした。
<Executive Summary>
The Featured Programme of the "Labyrinth of Classical Music" Demonstrates a Deep Relationship between Radio and Music (Yusuke Suzumura)
The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" featured gamelan named "A Summer Radio Calisthenics Festival" on 24th August 2024. It was a remarkable opportunity for us to understand a relationship between radio and music.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?