「第104回全国高等学校野球選手権大会決勝戦」はわれわれに何を教えるか
昨日開催された第104回全国高等学校野球選手権大会の決勝戦において、仙台育英学園高等学校(宮城県代表)が下関国際高等学校(山口県代表)を8対1で破り優勝したこと、さらに両校が「最後の勝利を得るために、清く美しく闘う」という意味での「勝利至上主義」を実践したことは、昨日の本欄で検討した通りです[1]。
その中でも言及した通り、仙台育英高校は「東北勢として初」、下関国際高校は「山口県勢として64年ぶり」の優勝を目指して対戦したことが、大きく注目されました。
確かに、1915(大正4)年以来104回を数える「夏の甲子園」は、その歴史の長さゆえに様々な記録が蓄積されており、各人の興味と関心に従い、種々の「大会初」や「何年ぶり」という記録が提示されます。そして、こうした多くの記録が大会への注目を集めるために寄与していることも周知の通りです。
一方で、仙台育英高校と下関国際高校をはじめとして、「夏の甲子園」の出場校だけでなく各都道府県の予選に出場した学校を含め、今回の顔触れで試合に臨むの最初であるばかりでなく最後でああることも明らかです。
文字通り1回限りの選手の組み合わせにより毎回の試合を行い、その結果としてある出場校は地方大会で敗退し、別の学校は勝利を重ねます、そして、各試合は1度行われれば2度と行われることは決してありません。
この点に注目すれば、いずれの試合も試合そのものの価値は変わらず、異なるのは予選であるか決勝戦であるかという試合の位置付けのみとなります。
その意味で両校の選手は過ぎ去り戻らない不可逆性の中で試合を行っているのです。これは、野球に限らず様々な競技に共通する性格でもあります。
それだけに、今回の両校による試合は、「初優勝」「何年ぶり」といった歴史的な側面とともに、出場する選手たちにとっての各試合の持つ意味という同時的な性格とを改めてわれわれに伝える、いつにも増して意義深いものであったと言えるでしょう。
[1]鈴村裕輔, 「最後の勝利を得るために清く美しく闘った」仙台育英学園高等学校と下関国際高等学校を讃える. 2022年8月22日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/4501f108786ece890f619383da6536e9?frame_id=435622 (2022年8月23日閲覧).
<Executive Summary>
What Is a Meaning of the Final Game of the 104th Japanese High School Baseball Championship (Yusuke Suzumura)
The Final Game of the 104th Japanese High School Baseball Championship is held at the Hanshin Koshien Stadium on 22nd August 2022 and the Sendai Ikuei Gakuen High School defeated the Shimonoseki International High School. On this occasion we examine a meaning of the game focusing of existentialistic aspect of sports.
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